本好きで年頃の娘の中では浮いていたのですが……共通の趣味を持つ人と出会え幸せを掴めました! ~もう過去とはお別れです~

四季

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6話「語り合い、そして己が心」

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 それからもトークは続いた。

「私も結構好きなんです、この娘」
「それはそれは! 嬉しいです! 推しかぶりは良いですね」

 私たちはもうずっと親友であるかのように――お互い気持ちや意見を交わす。

 遠慮とか、心の壁とか、そんなものはすべてとっぱらってしまって。

 純粋に、真っ直ぐに、見つめ合い語り合う。

「オイディールさんとかぶるなんて、ちょっと意外でした」
「え、そうですか?」
「だって性別も違いますし、見ている点はもっと違っているかなって。そう思っていたんです」
「なるほど! しかし、わりと似ていましたね」
「そうですね。案外、性別関係ない部分もあるものですね」

 それはある意味、本を読んでいる時の心境に似ていた。

 心が自由になる。
 どこへでも飛んでゆけてしまう。

 今、この胸には、無限の空を舞う翼がある。

「ああ、そうでした。それと、そこから十ページほど先なのですけど」
「暁の章の最後のページですね」
「……レジーナさん把握し過ぎじゃないですか?」
「え、そうでしょうか」
「いや、だって、さすがに詳し過ぎるでしょう」
「ええと……変、ですよね。すみません。あの……」
「いえ! そうじゃなくて!」
「え?」
「凄いなと! そう思ったのです! レジーナさんは本博士!」

 何だそれ、本博士って……。

「で、戻りますけど」
「はい」
「ここに登場するノワールという劇がありますよね?」
「はい、劇中劇のような」
「ここらへんは少し急に詩的になりますけど……レジーナさんはどう思います?」

 会話が盛り上がると、ついお茶を飲むことを忘れてしまう。それでちょっぴり口が渇くのだ。その渇きは一気に喉にまで到達する。で、気づいて口腔内を潤すのだけれど、その間は会話が止まってしまうのが少しだけ申し訳なくも感じる。

「ノワール、私は結構好きです」
「どういうところが?」
「それこそ、絶望の深淵が垣間見えるようで――でも、等身大の絶望、何だか少し共感できる部分もあって」
「そういうことですか」
「オイディールさんは違和感が?」
「はい、ちょっと、敢えてこれをここに挟んだ意図が」
「私が思うに、これは暁への希望と心の闇つまり絶望の狭間で揺れているのではないでしょうか」

 彼はハッとしてこちらを見た。

 ばっちり、目が合う。

「なるほど……!」

 目を大きく開いたまま呟くオイディール。

「希望と絶望が同時に胸に在る時、人は複雑な思いに見舞われるものです。本能的に希望を求め、しかし、一方で絶望という名の安寧を捨てることも恐ろしいもので。それで揺れるのです。光ある先へ行くのか、光はなくとも慣れ親しんだここにいるのか」

 私もそう。
 苦痛しかないあそこを、いまだに居場所としている。

「それは……レジーナさんの心ですか?」
「え」
「あ、いや、小説の話ですよね。ノワールの。けど……どうしてかな、僕にはレジーナさんの心のようにも感じられるんです」
「私の?」
「話してくださったことは、もしかしたら、貴女の心なのではないでしょうか」

 オイディールは目を伏せつつ述べる。

 彼は意外と鋭かった。

「なぜそう思うのです?」
「理由は……ありません、分かりません。でも、何か、漠然とそんな気がするのです」
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