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前編
しおりを挟む「エーリネリア・ウィトレッタ! 貴様との婚約、本日をもって破棄とする!」
告げられた言葉。
いつか聞いたことのあるもの。
――そうだ、私がこの世界へやって来る前、まだ日本という国にいた頃に聞いたことがある言葉否フレーズだ。
あの国にはそういうところから始まる物語が溢れていた。
「……本気なのですか?」
「ああ」
「我が家からの支援はどうなさるおつもりで?」
そう言ってやれば、婚約者である彼リドルガスは急にしゅんとしてしまった。
こちらの顔色を窺うような弱々しい表情になっている。
「あ……い、いや、それは一応……続けてほしいと、考えている、のだが……」
「無理ですよね」
「だ、だが! 今は正念場なんだ! ここを抜けなくては事業の成功はない!」
「本来自分のお金ですべきことでしょう、事業なんて」
私の心はもう決まっている。
彼に切り捨てられるのであれば当たり前だが支援は継続しない。
非もないというのに婚約破棄され、それでもなお彼のために支援し続けるなんて、そんな馬鹿げたことは絶対にしない。
「た、頼むよエーリネリア! 支援は継続してくれ!」
「父ははいとは言わないと思います。それに、私だって、当然嫌ですよ」
「婚約していた仲だろう……」
「他人になった人を支援するなんて馬鹿なことです。それに、他人となった貴方にお金を使うくらいなら、もっと優秀な方のために使う方が気分的に心地よいですし国のためにもなって理想的です」
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