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後編

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「何これ……?」

 それから、私は、世界を破壊し始めていた。

 手始めにエデルベリグルスの家が壊される。
 彼は瓦礫の下敷きになって死亡。

 両親も突然起きた嵐の被害で海まで流されて落命した。

 同年代の虐めてきていた人たちも皆多くのものを失って絶望。ある人は災難によって落命し、何とか助かった者も絶望に染まり自ら死を選んでゆく。

 しかしその程度で止まるわけではなく、破壊活動はさらに続き、気づけば国ほとんどが破壊されて。

「何を見ているの……?」

 私はただ見下ろしているだけのつもりだったのだけれど、そのうちにどんどん世界が壊れてゆく。

 破壊はやがて世界中へ広がって。

 世界中の人々が消えてゆく。

「え……え……」
『貴女は破壊の女神』
「えっ」
『貴女のその髪の色は、破壊の女神ぬ連なる者である証よ』

 黒いものが背後からにじりより耳もとで囁く。

『さぁ、世界を一度壊しましょう、すべて――』

 やがて世界はゼロに戻った。

 ここは終着地点。
 そしてはじまりの地でもある。

『お疲れ様』
「あなたは誰?」
『導く者』
「あの、意味が……」

 ここから再び歴史が始まるのだと、その者は言った。


 ◆


 二度目の人生、私は、愛してくれるとても優しく誠実な男性に巡り会えた。

 そして彼と結婚。

 一度世界が終わったことは誰も知らない。
 でも今は確かに幸せで。
 だから私も何も言おうとは思わない。

 ここで生きてゆこう――穏やかで、優しい、そんな世界で。

 
◆終わり◆
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