魔法の才を過剰に嫌っていた彼は幸せにはなれなかったようです。~そんなに嫌がることないのに、と思います~

四季

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前編

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 私は生まれつき魔法が使えた。
 けれどもそれゆえ良く思われなかったり傷つくようなことをあれこれ言われることも少なくはなかった。
 そんな私だが、年頃になると婚約者ができて。
 しかしそれはあくまで一応。愛し合ってとか、想い合ってとか、そういった果ての婚約ではなかった。

 でも私はそれでもいいと思っていた。

 だってどうせ私なんて愛されるわけがない。
 ならば本当の愛でなくても構わない。
 お互い協力して何とかやっていけるなら、それで親を心配させずに済むなら、それで良いと思っていたのだ。

 ――だが婚約者の彼アロモスはある日。

「君との婚約だが、破棄とすることにした」

 急にそんなことを告げてきて。

「婚約破棄、ですか」
「ああ。というのも、やはり、魔法を使える女と結婚するのは嫌だと思ってきたんだ。段々その思いが強くなってきた」
「……そう、ですよね」
「それに、な。そう思っているのは僕だけじゃない。親もそう言っているんだ『もし子どもも魔法が使えたらどうするの? 皆から虐められて可哀想よ』とかな。確かに、と思ったよ」

 魔法の才は遺伝しないのだが……。

「ということで、君との縁はここで切る」
「……悲しいことです」
「だとしても、だ。僕は僕の人生と僕の子の人生を守るためなら悪にだってなってやる」
「ええ……」
「何だ! 何か不満か!」
「いえ……ただ、残念だと」
「ふん、まぁいい。これで関係はおしまいだ。じゃあな、さよなら。……もう二度と僕の前に現れないでくれよ」

 こうして私は切り捨てられたのだった。
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