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1話
しおりを挟む母はいつも高圧的だった。
そして感情の波の大きい人でもあった。
機嫌が良い時は良き母だ。笑顔で接してくれるし楽しい話もしてくれる。細かいことまで気がつく人で、気が利くところも非常にありがたい。
だが機嫌が悪くなった途端人格が豹変して。
娘である私を奴隷のように扱ってくる。
しかもこれまで何も言われていなかったところに突っ込んできて叱ってきたり侮辱してきたり罵声を浴びせてきたりもするのだ。
私の人生は母の機嫌に振り回されている――それが現実だ。
救いはない。
当たり散らされている時はただ黙って耐えるしかない。
また、父がいる時には大抵暴走しないので、私が酷い目に遭わされていることを知る者もいないのだ。
「アリス! これ早くやっときなさいよ!」
「あ、うん……」
「遅い! ほんとのろまね、無能! いい、あとそっちも、それ終わったらすぐにするのよ」
「はい」
「何よその返事! だらしない! みっともない! いい加減にして、あたしの娘があんたみたいなやつで恥ずかしいわ!」
私はただ一人で耐え続ける外ない。
選べる道はそれ以外にはありはしないのだ。
だから諦めていた。
人並の生活なんて、尊厳を大事にされる生活なんて、無理だって。
そう思って生きていた。
いや、もはや、ただ息をしているだけに等しい状態だった。
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