上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む

「話って何?」
「外出のことなんだけど」
「ん? 外出?」
「最近、いっつも同じ女性と会ってない?」
「…………」
「何か言って」

 彼をじっと見つめると。

「……そう、だよ、会ってる」

 意外とすぐに認めた。

「やはり……!」
「でも言いたくなかった。傷つけるから」
「傷つける……? そんなの! 黙っていられる方が傷つくわ!」
「でも言っても傷つく!」
「そんなことするからでしょう!?」
「ごめん」
「……もういいわ、私、貴方とは歩まない」

 もう耐えられない。
 あんな嫌な情報を色々見せられて。
 我慢なんてできない。

 この世には、許せることと許せないことがある。

「婚約は破棄します」

 私は宣言する。

 幼き日、誓い合った未来――それはもう叶わぬ夢と化した。

「さようなら、リック」

 こうして彼との日々は終わった。


 ◆


 あの後リックは体調を崩したようだった。
 けれども婚約破棄の原因が彼の浮気だと皆が知っていたため私を責める者はいなかった。

 ……当たり前だけれど。

 そして、それから少しして、リックはもう元気に暮らすことはできないという事実が判明した。なぜなら回復しない病にかかってしまったから。そう、彼の体調不良はよくある風邪とか何とかではなかったのだ。彼がかかっていたのは治ることのない病気だった。

 近く、彼は死ぬだろう。

 病によって落命することだろう。

 その運命は変えられない。

 けれども、今はもう、悲しくはないし気の毒にとも思わない。

 そうそう、私はというと、今数件婚約希望を貰えている。なかなか良い条件の人もいる。
 まだこれから色々吟味していかなくてはならないけれど。
 でもきっと良い人を選べるはず。
 少しづつ、そのために色々考えていこうと思っているところだ。

 私は不幸になんてならない。
 彼のために残念な人生を選んだりはしない。

 ――驚くくらい幸せになってやる!

 そのために、まずは、婚約希望者に関して色々確認し考えるところから始めようと思う。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...