婚約破棄、そして、私だけのハッピーエンドへ。

四季

文字の大きさ
1 / 1

婚約破棄、そして、私だけのハッピーエンドへ。

しおりを挟む

 思えば、貴方と出会った日もこんな雨の日だった。

 山道で転倒して困っていた私に手を差し伸べてくれたのが貴方で。どうしようもないという絶望から私を連れ出してくれた貴方に、私は心を奪われた。それからはずっと貴方が愛しくて仕方がなくて。今思うと、その時から既に私の貴方への想いは始まっていたのね。

 そして、それから色々あって、ついに婚約するに至って。

 とても嬉しかった。
 夢をみているみたいで。

 貴方と生きられる――こんな幸せはない、そう思ったわ。

 だから思ったの。
 貴方を護っていこうと。
 貴方のために生きようと。

 ――でも貴方は私を捨てた。

「他に好きな人ができちゃったからさ、ごめんだけど、婚約は破棄するよ」

 青ざめる私の前で貴方はそう言って笑う。
 どこか無邪気に。
 それは貴方の恋を描いているかのようで。

 私の絶望はより大きくなった。

 掴めたと思った。
 幸福に手が届いたと。

 けれどもそれは幻想でしかなかったのだと、貴方に終わりを告げられてようやく気がついた。

 私が手に入れたと思っていたものは、私が抱き締めることができていると思ったものは、すべてが幻。幼い夢でしかなかったのだ。

 そう気づいた時、私の中の鎖が壊れた。

「――そう、ならば、共に滅びへ至りましょう」

 貴方を離しはしない。
 心までは持てずとも。
 地獄の底まで、永遠に、抱き締めたまま引きずり込んであげる。

 私は死に、貴方もまた死んだ。

 雨降りの夜に。

 人々はそれを悲劇と呼ぶ。
 けれども私にとっては違う。

 これは、私にとっては――ハッピーエンドなの。


◆終わり◆
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

好きな人ができたなら仕方ない、お別れしましょう

四季
恋愛
フルエリーゼとハインツは婚約者同士。 親同士は知り合いで、年が近いということもあってそこそこ親しくしていた。最初のうちは良かったのだ。 しかし、ハインツが段々、心ここに在らずのような目をするようになって……。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

婚約者である王子の近くには何やら不自然なほどに親しい元侍女の女性がいるのですが……? ~幸せになれるなんて思わないことです~

四季
恋愛
婚約者である王子の近くには何やら不自然なほどに親しい元侍女の女性がいるのですが……?

婚約者の私より彼女のことが好きなのですね? なら、別れて差し上げますよ

四季
恋愛
それなりに資産のある家に生まれた一人娘リーネリア・フリューゲルには婚約者がいる。 その婚約者というのが、母親の友人の息子であるダイス・カイン。 容姿端麗な彼だが、認識が少々甘いところがあって、問題が多く……。

婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季
恋愛
領地持ちかつ長い歴史を持つ家の一人娘であるコルネリア・ガレットは、婚約者レインに呼び出されて……。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

処理中です...