婚約破棄され命を絶とうとしたがうっかり蜘蛛の巣に引っかかってしまいまして。

四季

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後編

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「に、人間……じゃない……?」
「驚かせちゃったかしら、悪いわね。そう、あたしは人間ではないの。蜘蛛の血を引く高貴な種族よ」

 艶のある黒髪が美しい女性は微笑む。

 とても美しい人。
 この世の者とは思えないような空気をまとっている。

「貴女、崖から飛び降りたでしょう」
「あ……は、はい」
「蜘蛛の巣に引っかかっていたわ」

 だから助かったのか。

「それは……その、すみませんでした」
「一応連れて帰ってみたのだけれど、やはり生きていたようね。良かった、安心したわ」

 死ねなかった。
 これは良かったのは悪かったのか。

「助けてくださってありがとうございました」

 その後、何があってそんなことをしたのか聞かれたので、本当のことを話した。

「そう。分かったわ。きっととても辛かったでしょう――望むなら、しばらくここにいなさい」

 考えてしまうことは色々あったけれど、私は、彼女のもとでしばらく生きることにした。

 ここでなら知り合いには会わない。
 憐れに思われることもないだろう。
 さらに親に心配されることからも逃れられる。

 今の私にはもってこいな場所だ。


 ◆


 あれから二年半が経ったが、私は今も、下半身が蜘蛛の腹部になっている女性と共に洞窟内で生活している。

 彼女は昆虫を食べる。
 だが私にも同じことを求めようとはしない。
 なので私は拾ってきた木の実やら何やらを食べて生き延びている。

 そういえば。

 かつて私を傷つけたハルゲンは、女性が送り込んだ刺客――毒蜘蛛たちに噛まれ、その毒素によって亡くなったようだ。

 亡くなるまでずっと、彼は、つるつる頭を皆に馬鹿にされ笑われる悪夢をみて苦しんでいたらしい。


◆終わり◆
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