1 / 3
前編
しおりを挟む
四人姉妹の上から二番目として生まれた私——アルノレアは、何かと損な人生を歩んできた。
生まれた時には既にこの世に存在していた姉、長女は、美しい容姿を持ち手先が器用で家事も難なくこなしてしまう完璧な女性。
それに比べて、私は、すべてにおいて普通。
私は姉のような通った鼻筋も華やかな瞳も持っていない。私にあるのは、悪くもなく良くもない平凡な容姿のみ。
毛嫌いされる容姿でないだけまだ幸せなのかもしれないけれど。
でも、美しいとされる姉を間近で見てきた私にしてみれば、なぜ自分はこんな平凡なのだろう、と思わずにはいられない。
そして、器用さでもまた、私は姉に負けていた。
姉は何でもすんなりこなす。初めてのことでもそれなりにできる。とにかく能力が高く、それも、彼女が賞賛される一因であった。
ただ、だからこそ、余計に比べられた。
「なぜお前はそんなに不器用なの?」
母親からはよくこんなことを言われた。
「美しさがないんだ、もう少し器用に生きられるようになれ。そうでなくては価値がない」
妻に似ている姉を大層可愛がっていた父親からは、ことあるごとに嫌みを言われていた。
でも、姉妹二人であった時代はまだ幸せだったのだと、後に気づくことになる——そう、妹が生まれたのである。
最終的に妹は二人になった。そして、その二人もまた、姉と同じような美しいとされる容姿を持っていた。となると、家の中で平凡な容姿なのは私だけとなってしまって。両親、特に父親は、私を露骨に嫌うようになった。
そんな状態で迎えた、私の十八の誕生日。
父親が珍しく声をかけてきた。
「アルノレア、少しいいか?」
「何でしょうか」
父親は私を名前では呼ばない。いつも『お前』などと呼ぶ。だからこの時は違和感を覚えた。なぜ名前で呼ぶのか、と。なぜそんなに機嫌が良さそうなのか、と。
「良い婚約者を見つけた。隣国の領主の次男だ」
「なぜ私に?」
「何でも、三十過ぎてまだ独身らしい。余り物同士気が合うかもしれないぞ」
つまり、父親は私を追い出そうとしているのだ。
気に食わない女をこの家から追い出して不満のない暮らしをしたい、といったところだろうか。
どうしていきなり私を気にかけ始めたのかと不思議に思ったけれども、そういうことなら納得だ。私を家から追い出すための行動、ということなら、理解はできる。
でもこれは良い機会かもしれない。
私としても、いつまでのこの家にはいられない。いや、いるだけなら可能だけれど。ただ、気まずさの中でずっと生きてゆくというのは、さすがに辛い。
別の場所に行ったからといって、今以上の幸せがあるとは限らない。
けれども、賭けることはできる。
生まれた時には既にこの世に存在していた姉、長女は、美しい容姿を持ち手先が器用で家事も難なくこなしてしまう完璧な女性。
それに比べて、私は、すべてにおいて普通。
私は姉のような通った鼻筋も華やかな瞳も持っていない。私にあるのは、悪くもなく良くもない平凡な容姿のみ。
毛嫌いされる容姿でないだけまだ幸せなのかもしれないけれど。
でも、美しいとされる姉を間近で見てきた私にしてみれば、なぜ自分はこんな平凡なのだろう、と思わずにはいられない。
そして、器用さでもまた、私は姉に負けていた。
姉は何でもすんなりこなす。初めてのことでもそれなりにできる。とにかく能力が高く、それも、彼女が賞賛される一因であった。
ただ、だからこそ、余計に比べられた。
「なぜお前はそんなに不器用なの?」
母親からはよくこんなことを言われた。
「美しさがないんだ、もう少し器用に生きられるようになれ。そうでなくては価値がない」
妻に似ている姉を大層可愛がっていた父親からは、ことあるごとに嫌みを言われていた。
でも、姉妹二人であった時代はまだ幸せだったのだと、後に気づくことになる——そう、妹が生まれたのである。
最終的に妹は二人になった。そして、その二人もまた、姉と同じような美しいとされる容姿を持っていた。となると、家の中で平凡な容姿なのは私だけとなってしまって。両親、特に父親は、私を露骨に嫌うようになった。
そんな状態で迎えた、私の十八の誕生日。
父親が珍しく声をかけてきた。
「アルノレア、少しいいか?」
「何でしょうか」
父親は私を名前では呼ばない。いつも『お前』などと呼ぶ。だからこの時は違和感を覚えた。なぜ名前で呼ぶのか、と。なぜそんなに機嫌が良さそうなのか、と。
「良い婚約者を見つけた。隣国の領主の次男だ」
「なぜ私に?」
「何でも、三十過ぎてまだ独身らしい。余り物同士気が合うかもしれないぞ」
つまり、父親は私を追い出そうとしているのだ。
気に食わない女をこの家から追い出して不満のない暮らしをしたい、といったところだろうか。
どうしていきなり私を気にかけ始めたのかと不思議に思ったけれども、そういうことなら納得だ。私を家から追い出すための行動、ということなら、理解はできる。
でもこれは良い機会かもしれない。
私としても、いつまでのこの家にはいられない。いや、いるだけなら可能だけれど。ただ、気まずさの中でずっと生きてゆくというのは、さすがに辛い。
別の場所に行ったからといって、今以上の幸せがあるとは限らない。
けれども、賭けることはできる。
993
あなたにおすすめの小説
姉妹差別の末路
京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します!
妹嫌悪。ゆるゆる設定
※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済
【完結】婚約破棄中に思い出した三人~恐らく私のお父様が最強~
かのん
恋愛
どこにでもある婚約破棄。
だが、その中心にいる王子、その婚約者、そして男爵令嬢の三人は婚約破棄の瞬間に雷に打たれたかのように思い出す。
だめだ。
このまま婚約破棄したらこの国が亡びる。
これは、婚約破棄直後に、白昼夢によって未来を見てしまった三人の婚約破棄騒動物語。
ことあるごとに絡んでくる妹が鬱陶しいので、罠にかけました
四季
恋愛
わがままに育った妹は、私の大事なものをことあるごとに奪ってくる。しかも父親は妹を可愛がっていてまっとうな判断ができない。
これまでは諦めるだけだった。
でももう許さない。
妹の特性を利用し、罠にはめるーー!
【完結】私の妹を皆溺愛するけど、え? そんなに可愛いかしら?
かのん
恋愛
わぁい!ホットランキング50位だぁ(●´∀`●)ありがとうごさいます!
私の妹は皆に溺愛される。そして私の物を全て奪っていく小悪魔だ。けれど私はいつもそんな妹を見つめながら思うのだ。
妹。そんなに可愛い?えぇ?本当に?
ゆるふわ設定です。それでもいいよ♪という優しい方は頭空っぽにしてお読みください。
全13話完結で、3月18日より毎日更新していきます。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる