穏やかな春、過去のほろ苦い記憶を思い出すことがあります。~それでも今の幸福は決して変わらぬものです~

四季

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後編

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「それで、確かその彼って」
「死んだのよ」
「そうだった!」
「よく覚えていたわね」
「前に聞いたようなーって……そんな気がしたんだ、ちょっとだけど」

 ちなみに、私を捨てた彼は、友人との結婚後少しして他の異性の友人から刺されてしまい死亡することとなったのだそうだ。

 刺した女性が言うには「彼はあたしを好んでくれていたのに、あの女が奪った! 許せない! だから殺したのよ」ということだそう。

 まぁ、想像できないことではないが……多分彼は異性の友人大勢に中途半端に手を出していたのだろう。

 実際、結婚相手を決めたのも子のことがあってだ。

 何もなければずっと複数人とほどほどにいちゃついて生きていくつもりだったのだろう。

「最低だよね、その男」
「ええ……本当に」

 けれども彼は失敗した。
 それで最終的には死にまで至ってしまった。

「でも、彼がもうこの世にいないっていうのは大きいな。また絡んできたりとかは絶対にないわけだし」
「私が心変わりすると思っているの?」
「いやそうじゃない。でも、都合が悪くなったらすり寄ってきたり、しそうじゃない?」
「ああー、確かに。ありそうありそう」

 でも自業自得、だから彼には同情しない。

 周囲を振り回し身勝手なことをしている者が悪いのだ。

「そういう手間はない方がいいからさ」
「それはそうね! 確かに! 同感だわ!」

 窓の外へ目をやれば、花壇の花が春風に揺れていた。

 それはまるで私たちを祝福してくれているかのよう。

 柔らかで、愛おしい、春が。

 平穏を彩ってくれる。


◆終わり◆
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