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1話
しおりを挟む愛していた人に浮気されていたことが発覚したうえそのことについて質問したところ心ない言葉を大量に投げつけられてしまいさらに婚約破棄まで告げられてしまった、そんな悲惨な出来事によって心折れていた私だったが――実家への道を歩いていた夕暮れ時、路上で店を構える一人の女性占い師に声をかけられた。
「貴女は今、絶望の中にいますね」
見知らぬ人。いつもそこで店を開いているわけではない人だ。でも彼女はまるで遠い昔からの知り合いであるかのように自然な形で声をかけてくる。
「けれども安心なさい。貴女にはこれから、間違いなく、確かな幸運が数多降り注ぐことでしょう」
私はただきょとんとすることしかできなくて。
良いことを言ってもらえてはいるのだが若干怖さもあって。
あ、はい――なんて曖昧な返事をして、早足に通り過ぎることしかできなかった。
後ろから聞こえる、ふふ、という小さな笑い声。
それは慎ましくも艶やかで、かつ、世界の母のような包容力を感じさせるものであった。
(幸運が降り注ぐなんて……そんなこと、あるわけない。だって私愛していた人に捨てられたのよ? この絶望が晴れるなんてこと、あるわけがないじゃない)
私は占い師の言葉を信じてはいなかった。
いや、厳密には、そんな都合のいい言葉などとても信じられる状態ではなかったのだ。
絶望の中に、暗闇の中に、在る時は誰しも希望など見つけられないものだ。
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