少しも愛してくれず散々女遊びしておいて私を悪女扱いするような彼との縁は切れて良かったです。

四季

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1話「婚約者は私を悪女と言います」

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「お前はどうしてそんなに可愛くないんだ!」

 我が婚約者でモロロリット国の王子でもある彼ベルガル・モロロリットは私を愛していない。

 狼のような髪の質が特徴的な彼は私をいつも悪く言う。

 そして、自分はというと、好き放題周りの女に手を出しているのだ。

「私が意見したのは、貴方の行動があまりにも身勝手だからです」
「黙れ悪女!」

 これまでにもそういうことはあったのだけれど、先日、ベルガルが侍女の一人と過剰に関わりを深めていたことが判明した。
 それで、今はその話をしているのだが、彼は自分の非を一切認めようとしない。
 彼は非を認めないどころか意見を言っただけの私を悪者であるかのように仕立て上げようとしている。

 でも、そういうのも今に始まったことではないのだ。

 ベルガルはもうずっとそんな感じ。
 好き放題して、女に手を出しまくって、そのことについて何か言われれば言った方が悪いかのように話をすり替える。

 ……だから私はもう彼を愛してはいない。

「お前の性格が悪いのがすべての元凶だ!」
「酷いですね、その言い方は」
「ああ? 何だと? 生意気なんだよお前は! ちょっと婚約者になったからっていきんな!」
「そういう話ではありません。これはこの国の将来に関わることで……」
「黙れアリシーナ!!」

 叫ばれて、びくっとなってしまう。

 二人きりの場所だからこそ彼は気兼ねなく叫べている。
 でもそれはずるいことだと思う。
 自分より弱い相手の前でだけ激しく怒って脅すような真似をするなんて、人として問題だ。

「少し許していれば調子に乗りやがって……もういい! お前なんか捨ててやる! 価値のない偉そうなだけの女なんぞ、もうどうでもいい!」

 ベルガルがやっているのは不満をまき散らす行為で、それは、子どもがやっているのと同じようなもの。

 好き放題したい。
 で、それに何か言われることは許せない。

 未熟の極みである。

「何を……」
「アリシーナ! 貴様との婚約、破棄とする!」
「えっ」
「馬鹿にはここまでしなくちゃ分からないだろ! だからやってやる、やってやんよ、婚約破棄! お前との婚約は破棄する!!」

 ベルガルは嬉しそうな顔をしている。

 ああ、そうか。
 彼はもう私と共にありたくはないのか。

 これまでは曖昧なままになっていた部分だったけれど、これではっきりした。

 彼は私を必要としていない。
 それも一切。
 いつでも捨てられる存在くらいにしか考えていない。

 それは残念なことではあるけれど――ただ、ある意味少し気が楽になる要素でもあって。

「まぁ……頭を地につけて謝るなら再考してやってもいいけどな」
「あ、いえ、結構です」

 これですべて終わる。

 そういう解放感は確かにあった。
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