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後編
しおりを挟むだってそうだろう? これ以上ここにいても良いことなんて一つもない。それは誰の目にも明らかなことだ。それならば離れるのが得策ではないか? 離れてしまえばもうこき使われることはないし馬鹿にされることもないし惨めな思いをさせられることもない。つまり、ありとあらゆるもやもやからの解放である。
婚約破棄されたとなれば残念に思うだろう、普通は。
でも今回に限っては真逆。
むしろこの終焉は良いものだ。
新しい世界へと飛び出してゆくための第一歩、出発地点が婚約破棄なのである。
私はもう自由。
誰にも貶められないし誰にも支配されない。
「さ、何しよっかな~」
◆
オーベレットとの婚約破棄から三年ほどが経った。
私の人生は大きく変わった。
虐げられていたあの頃の私とはもう別人のようである。
というのも、婚約破棄後屋敷で仕事を始めたのである。
そこで私は主に見初められ、屋敷の主である彼と結婚――そして私は働いていた屋敷の奥様となったのであった。
それでもなお皆には良くしてもらっている。
元同僚である人たちからも悪いことを言われることはないしむしろ大切にしてもらえている。
私はここで多くの人に愛されて生きてゆく。
これこそが私の幸せだ。
今はただひたすらにそう思っている。
ちなみにオーベレットはというと、あの後別の女性と婚約するも散々罵倒しこき使おうとしたために反発され悪行を世にばらされてしまったそうだ。そしてそれによってオーベレットは評判を堕とすこととなってしまって。皆から冷ややかな目を向けられるようになってしまったそうだ。
そうしてオーベレットは転落人生を歩むこととなっていったらしい。
ま、彼の行動が招いたことなのでどうなろうとも自業自得なのだが。
神とはやはり存在するのだ。
改めてそんな風に感じた。
良い行いをしていれば、真っ当に生きていれば、それなりに良い未来を手に入れることができる。
対照的に、悪いことや身勝手なことを重ねていれば、いずれ手にしていたものは壊れ崩れてゆき負の未来が待っている。
――そういうものなのだ、この世は。
◆終わり◆
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