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2話「尾行し、親に報告」
しおりを挟む覗く気はなかったけれど、思わぬ形で二人の関係を知ってしまった。
でも一度気づいてしまったら目を離すことはできなくて。
慣ていないことをするのは嫌だ、と思いつつも、二人を尾行することにした。
なるべく見つからないように、気をつけて、こっそり。
並んだ二つの背を追う。
「これ食べたいですわ!」
「いいな」
「買ってくださいます?」
「ああ、もちろん、ミレナの分も払うよ」
二人はワゴンで売っているクレープを並んで食べる。
しかもモルティンの奢りで。
モルティンはチョコレート味、ミレナはストロベリー味。まるでデートしているカップルであるかのような二人だ。
「これ! 美味しいですわ!」
「ストロベリー?」
「ええ、甘酸っぱくって美味!」
「そうか、食べてみたいな。駄目か? 一口だけ」
「え……そ、そんな……」
「どうした?」
「……恥ずかしい、です……そんな、ことって」
わざと照れてみせるミレナ。
私は一体何を見せられているのだろう……。
クレープ完食後、二人は歩き出す。
しかも手を繋ぎながら。
凄く近い距離で、特別な雰囲気を漂わせながら、足を動かしている。
そういうことか。婚約破棄されたのはこういうことだったのか。モルティンは妹に乗り換えようとした、で、私は邪魔だったから切り落とした。悲しいし悔しさもあるけれど、それが現実で答えなのだろう。
二人は雑貨屋を見て回り、その後、休憩しようとか何とか言ってあまり健全とは言えないような宿泊所へ入っていった。
ぼろぼろな建物に入っていくところを咄嗟に撮影。
それから私は帰ることにした。
……見たくなかった、こんな場面。
なぜだか分からないけれど急に涙が溢れてくる。
心の奥底で何かが震えているようだった。
言葉なんて上手く出せないけれど、ただただ胸が痛く、辛い。
……こんなこと、親に言えないじゃない。
妹が婚約者をたぶらかしていた、なんて、そんなことを実の親に言うことはできそうにない……が、それでも言おうと思っていた。
数は多くないがあの時咄嗟に撮影した写真は証拠として使えるはず。
それを持って両親に話してみよう。
そう思った。
……というより、その時の私にはそれしか道がないように感じられていたのだ。
◆
「何だと!?」
「ミレナが!?」
父と母がほぼ同時に驚きの声をあげる。
確かに今ミレナはいない。両親によれば「友人と遊んでくる」と言って出掛けたそう。でもいてくれなくて良かった、おかげで踏み込んだところまで話しやすい。このタイミングで本人がいないというのはありがたいことだ。
「あいつ……裏でそんなことをしていたとは……」
父は怒りに声を震わせる。
「さすがに酷すぎるわね」
母もまた静かにではあるが怒ってくれているようだった。
色々残念な目に遭っている私。
でも救いはある。
それは、味方してくれる両親がいること。
味方が一人でもいてくれれば私はどこまでも強くなれる!
「とにかく、帰ってきたら父がミレナに話を聞くこととする」
「父さん、ごめんなさい迷惑かけて」
「いいや! お前は悪くない!」
「でも……私が魅力的でなかったからこんなことに……」
どうしても思ってしまう。私がもっと魅力的だったらこんなことにはならなかったのかも、と。卑屈になってはいけないと思ってはいるのだけれど、でも、どうしても悪い方向に物事を考えてしまうのだ。
「違う!!」
「……え」
「そんなことを言うなベルリーズ。お前は素晴らしい娘だ、誇りに思える娘だ。だから自身を否定するな!」
「……はい」
「いいな? 絶対己を下げるようなことを言うなよ?」
「はい、気をつけます」
そこへ口を挟んでくるのは母。
「悪いのはミレナよ」
彼女の声は冷ややかで、研がれた刃のようだった。
「貴女に非はないわ」
でも、そう言ってもらえて嬉しかった。
はっきり言ってもらえて自信がついた。
私は悪くない。
私のせいではない。
そう言ってもらえるだけで、少し強くなれる気がする。
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