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3話「怒る父母」
しおりを挟む「ミレナ、お前、姉の婚約者を奪ったそうだな?」
父は帰ってくるのを待っていてミレナに向けて言葉を放つ。
「え……何ですの? その話」
「ベルリーズが言っていた」
「そんな……どうしてお姉さまがそんなことを……」
「認めろ。姉の婚約者に近づいたな?」
「そんなこと! 知りませんわ! きっと嘘ですわ、そんなの」
私は壁の陰に隠れて様子を見守る。
ミレナはすぐには認めなかった。
「そんな……お姉さまがそんなことを仰るなんて……ひどぃ……」
ミレナは目をうるうるさせている。
「お姉さまはきっと傷ついて捨てられたということを受け入れられなくなっているのですわ。だからそんなことを仰るのです。きっとそう、間違いありませんわ」
「……本気で言っているか? それは」
「ええ! だってわたくし、まったくもって心当たりがありませんもの。お姉さまはきっとショックでおかしくなってしまったのですわ」
はぁ、と、一つ溜め息をついて――父は「なら証拠を出そうか」と呟くように発する。
そして、写真を出した。
それは私が撮影したものだ。
ミレナがモルティンと一緒にいるところを撮ったもの。
「こういうものがあるが」
それを見て、ミレナは表情を固くする。
「な、何ですの……? これ……」
「お前が彼と関わりを持っている証拠だ」
「しっ、知りませんわっ!」
「これを見てもなおそう言うのか?」
「……だって知らないんですもの」
「本当か? 本当に知らないのか? ……本当のことを言えよ」
父の声は冷たく淡々としている。
ミレナは動揺を隠せない面持ちで黙ってしまう。
沈黙の果てに――
「……モルティン様に強く言われて、拒否できなかったのですわ」
――やがて彼との関わりを認めた。
「それは事実か?」
「ええ! そうですわ! わたくしは一緒に遊ぼうと誘われただけです。それ以上のことなんてありません! ですからわたくしは悪くないのです」
「だとしても、姉の婚約者に手を出すとは情けないにもほどがある」
「……申し訳ありません」
しゅんとしてみせるミレナ。
でもそれはこの状況をやり過ごすための演技でしかないのだろう。
きっと反省なんてしていない。
「まぁいい、これからモルティンにも話を聞く。それで話が合っていれば……ミレナ、お前が嘘をついていないということを認めよう」
父とミレナの話は一旦ここで終わる。
その後父はモルティンに連絡を取っていた。
だが、モルティンは「こちらから手を出したなんて嘘だ、そんなことはしていない。彼女が近づいてきたのだ」という主張をしたようで、それによってミレナとモルティンの主張は食い違うこととなる。
とはいえどちらが事実かなんて分からないわけだが。
街の人たちに聞き込みをしたところ、モルティンにやたらと近づきからもうとするミレナを見たという話がたくさん出てきて。
どうやらミレナから近づいたようだ。
そういう結果が出た。
「ミレナ、貴女、最低な女ね。他人の婚約者に手を出すなんて」
その話を聞き特に不快感を露わにしたのは母だった。
「……悪いことはしていませんわ」
「反省しているの?」
「していません! 悪いことなんて! わたくしはただ少し喋っただけですわ。それに! モルティン様を惹きつけておく魅力のないお姉さまにも非はありますわ! わたくしはそんなつもりなかったのに……」
ミレナはあれこれ意味不明な言葉を並べる。どうにか罪から逃れようとしているのだろう。責められないよう努力しているのだろう。
でも、何を言っても無駄だ。
近づいたのが彼女なら。
「いい加減になさい、ミレナ」
母の声が一段と冷ややかになる。
「貴女のせいでベルリーズが傷ついたのよ? 分かっているの?」
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