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6話「見てしまった、けれど意外と」
しおりを挟むあれから私はウェボンと定期的に会うようになった。
気が合ったし一緒にいて楽しかったから。
多分お互い将来についても考えていたと思う――けれど特別結婚とか何とかには触れることはなく。
そのまま踏み込んだ話はしないままで時が流れた。
そんなある日、私は、一人出掛けていた時に街で何者かに絡まれてしまっているウェボンを目撃する。
少しして、何者かが何者であるかに気づき、驚く。
――ミレナだったのだ。
「っ!?」
思わず隠れてしまった。
でもどうして? どうしてミレナと? まさか、ウェボンまであの女に心を奪われて……? いや、でも、それは考え難い。彼はきっちりしている人だ、勝手に乗り換えるようなことをするとは思えない。
……いや、私もまだ厳密には婚約してはいないのだが。
ということで、取り敢えずもう少し様子を見てみることに。
「っ、やめてください! 何するんですか!」
「ねーえ、一緒に遊びませんことぉ? 実はぁ、前にお会いした時、惚れていたんですのー」
ミレナは腕を伸ばしやたらとウェボンに触れている。
べたべたと、容赦なく。
無礼なほど距離を縮めようと行動している。
ただ、ウェボンは応じる気はなさそうだ。
不快そうな顔をしているし拒否している。
「離れてください!」
「ちょっとくらいいいじゃないですのぉ」
ウェボンは乗せられていない。
見ているだけで分かった。
彼は迫られても拒否し続けている。
信頼できる人だなぁ、と思った。
こんな人と一緒に生きてみたい。
「嫌です! 好きな人がいる身です、そのようなことはできません!」
「あいつのこと? あーんな地味ダサ女放っておいてぇ、遊んでくださらない? わたくしの方が素敵ですわよ?」
「お断りです!」
「酷いですわねぇ」
「近寄らないでください! 人を呼びますよ」
「ええ~? こんな可愛い女の子ですよぉ? あれこれ言っていてもぉ、本当は遊びたいですよねぇ~?」
その時、ウェボンはついに彼女を突き飛ばした。
「何のつもりか知りませんが、もうやめてください!」
ウェボンは怒っていた。
「近づかないでください!」
するとミレナはちっと舌打ちをして彼を睨む。
「面白くない男!」
そう吐き捨てて、ミレナは去っていった。
刹那。
「いらっしゃいますよね? ベルリーズさん」
振り返り名を呼ばれる。
ばれていた!? と焦ったが、何も悪いことはしていないのだから、と自分に言い聞かせてから出ていく。
「……じ、実は」
それしか言えない。
――気まずいッ!!
「すみませんでした、失礼なところを見せてしまって」
一応そう言っておくけれど、どんな顔をして彼に向き合えば良いものか分からず困ってしまう。
気にしているように振る舞って良いもの?
何もなかったかのように振る舞っておくべき?
……どちらが良いのだろう、難しい。
「いえ……でも驚きました、まさか、ミレナと関わりがあったなんて」
「向こうが近づいてきたのですよ」
「そ、そうですか……」
「相変わらず、という感じですね。妹さんは」
「ご迷惑をすみません……」
「ああいえ! そういう意味では! 責めているわけではありませんよ? 言い方が変だったらすみません」
お互い気を遣ってしまう。
何とも言えない空気だ。
「幻滅なさいましたか?」
ウェボンは自ら選んだタイミングで問いを放つ。
「え」
「情けない男と思われましたか?」
これまた答えが難しいやつだ……。
「い、いえ、きちんと断っていらっしゃいましたし、すごいなぁと思いました」
「なら良かった」
「え?」
「……嫌われたかと思いました」
「どういうことです?」
念のため探ってみると。
「あ……じ、自意識過剰ですよね、すみません」
ウェボンは苦笑しながら謝ってきた。
「べつに交際しているわけでもないのに責められるかもなんて……ちょっとおかしいですよね、どうかしていますね僕」
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