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前編
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「オマエッティ、さぁ」
婚約者パーフプルが急に話しかけてくる。
ちなみにこのオマエッティというのは私の名前ではない。
お前、という意味で彼が使っている単語である。
「何?」
「今日も冴えねぇよなぁ」
「急に何よ、失礼ね」
「失礼? なんだそりゃ、馬鹿じゃねぇのか」
パーフプルが失礼なのはいつものことなので驚きはしないが……。
「事実を言ってるだけだろ? ろ?」
「……それで、何か言いたいことがあるの?」
私たちはもう八年くらい一緒にいる。
だから相手のことはわりと色々知っている。
「ああそうだ! ある! 言いたいこと、ある!」
「じゃあどうぞ」
するとパーフプルはウインクして。
「婚約、破棄するわ!」
軽やかな調子でそんなことを言い放った。
「え……何それ、本気?」
「ああ本気だ、あったりめぇだろ。オマエッティ、馬鹿か」
「そう。分かったわ。でもどうして? あまりにも急じゃない? 何かあったの」
すると彼はまたまたウインクして。
「可愛い娘にいい感じになってて、サ!」
そんなことを言った。
「彼女と生きたいなーって思うようになったんだよ」
「そういうことか……」
「いいだろ? 俺の人生なんだから、俺の好きなようにするのが吉だろぉ?」
「何を言っても無駄なのでしょう?」
「ああ! 心はもう決まっている!」
身勝手過ぎると思う、が、無駄なことをあれこれ言うかというとそんなことをするつもりはない。
……だって無駄じゃない、その時間。
「じゃ、そうしましょ」
「よっしゃ!」
「ただし、慰謝料は払ってもらうからね」
彼は「ええー」なんて言ってブーイングするけれど。
「そちらの都合なのだから当然でしょう」
逃がさない。
許さない。
うやむやにさせてなんてあげない。
婚約破棄するのは良いけれど、どうしてもそうしたいのであれば約束を破った罪への償いだけはしてもらう。
大人なのだから己の選択には責任を持つべきだ。
婚約者パーフプルが急に話しかけてくる。
ちなみにこのオマエッティというのは私の名前ではない。
お前、という意味で彼が使っている単語である。
「何?」
「今日も冴えねぇよなぁ」
「急に何よ、失礼ね」
「失礼? なんだそりゃ、馬鹿じゃねぇのか」
パーフプルが失礼なのはいつものことなので驚きはしないが……。
「事実を言ってるだけだろ? ろ?」
「……それで、何か言いたいことがあるの?」
私たちはもう八年くらい一緒にいる。
だから相手のことはわりと色々知っている。
「ああそうだ! ある! 言いたいこと、ある!」
「じゃあどうぞ」
するとパーフプルはウインクして。
「婚約、破棄するわ!」
軽やかな調子でそんなことを言い放った。
「え……何それ、本気?」
「ああ本気だ、あったりめぇだろ。オマエッティ、馬鹿か」
「そう。分かったわ。でもどうして? あまりにも急じゃない? 何かあったの」
すると彼はまたまたウインクして。
「可愛い娘にいい感じになってて、サ!」
そんなことを言った。
「彼女と生きたいなーって思うようになったんだよ」
「そういうことか……」
「いいだろ? 俺の人生なんだから、俺の好きなようにするのが吉だろぉ?」
「何を言っても無駄なのでしょう?」
「ああ! 心はもう決まっている!」
身勝手過ぎると思う、が、無駄なことをあれこれ言うかというとそんなことをするつもりはない。
……だって無駄じゃない、その時間。
「じゃ、そうしましょ」
「よっしゃ!」
「ただし、慰謝料は払ってもらうからね」
彼は「ええー」なんて言ってブーイングするけれど。
「そちらの都合なのだから当然でしょう」
逃がさない。
許さない。
うやむやにさせてなんてあげない。
婚約破棄するのは良いけれど、どうしてもそうしたいのであれば約束を破った罪への償いだけはしてもらう。
大人なのだから己の選択には責任を持つべきだ。
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