平凡女子高生、美少女に転生する。〜夜会で出会った彼は、蜘蛛好き〜

四季

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5話「友人になった……が」

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 パトリーと友人になった。
 最初の友人が男性だとは思わなかったが、まぁ、それでも問題ないだろう。

「で。友人とは何をするのか」
「知りません」

 女子高校生だった頃は、友人は何人かいた。多い方ではなかったけれど、でも、一人ぼっちではなかった。休日に会って遊んだりしたこともある。
 けれど、こちらの世界へ来てからは、まだ友人がいない。つまり、リリエラには友人がいないのである。

「友人がいないのか」
「はい」
「そうか。私もだ」

 パトリーも友人が少ないタイプなのか。だとしたら、私とは、少しは気が合うかもしれない。私は、友人が多いタイプの人間が苦手だから。

 そんなことを考えていると、パトリーは言ってくる。

「取り敢えず、ここで別れよう」

 その発言には、さすがに驚いてしまった。友人になった以上、少しくらいは話したりできるかと考えていたからだ。いきなり「ここで別れよう」などと言われてしまう展開なんて、想定の範囲外である。

「別れるのですか?」
「あぁ。することがないのに、二人でいることもないだろう」

 パトリーは淡々と述べた。
 彼からは、親しくなりたいという思いが、微塵も感じられない。

 そこへ、彼の父親であるボクが口を挟む。

「待つんだ、パトリー。せっかくの機会だというのに、お嬢さんと一緒に過ごさないのかい?」

 ボクの問いに対し、パトリーは「することがない」と返す。感情のこもっていない、凄く静かな声色で。

「することはある! まずは、お互いのことを知るところから始めてはどうかな?」

 明るい声を作り、提案するボク。
 だが、パトリーがその気になることはなかった。

「断る。面倒だ」
「パトリー!」
「絶対に断る。今日は人に絡まれ続けて疲れているんだ、しばらく一人になりたい」
「うぅむ……仕方ない息子だなぁ……」

 交流を頑なに拒否するパトリーに、ボクは溜め息を漏らす。その顔面には、渋柿を食べてしまったかのような表情が滲んでいた。


 なんだかんだで、今日のところは別れることになり。私はパトリーから離れ、皆がいる方へと歩き出す。

 私が一人になるや否や、女性数名が現れ、立ち塞がった。

「少し、よろしくて?」

 最初に口を開いたのは、筒をいくつもくっつけたような派手な巻き髪の女性。ややつり目で、濃いめの化粧。ファンタジーものの少女漫画に悪役として出てきそうな雰囲気を持った人である。

「お主リリエラと言ったか。吾輩らを差し置いてパトリー様と話すとは、どういうつもりじゃ」

 次に口を開いたのは、巻き髪の女性の向かって左にいる女性。

 巻き髪の女性が二十二三歳くらいに見えるのに対し、彼女は二十歳くらいに見える。私よりかは年上だろうが若いことは若い、というような年代だ。
 容姿は並。肩まで伸びる黒髪はパサついており、せっかく花柄が綺麗な着物風のドレスを着ているというのに、残念な感じに仕上がってしまっている。髪を結うだけでも、もっと魅力的に仕上がっただろうに。

「二人の言うとおりやわぁ。何か狡いわぁ」

 巻き髪の女性の向かって右、少し下がって控えている大人しそうな娘まで、そんなことを言い出す。

 ちなみに、三人の中では彼女が一番美人かもしれない。
 というのも、彼女には素朴な愛らしさがあるのである。

「パトリー様に近づきたいのなら、周囲に許可をお取りなさい!」

 うわぁ、鬱陶しい。
 しかも……許可て何、許可て。

「あの、通していただけませんか」
「それはできませんわ! あたくしが貴女の悪質な行為を許すまで、ここは通しませんことよ」

 ただ通りたいだけなのに、それさえ自由にさせてもらえないなんて。これは一体、どうなっているのか。

「まずはお名乗りなさい!」
「リリエラ・カルセドニーと申します」

 一応名乗る。
 すると、巻き髪の女性は、ふん、と鼻で笑う。

「リリエラね。分かりましたわ」

 巻き髪の女性が鼻で笑ったのを見て、他の二人もわざとらしく「ふふふ」と笑う。

「リリエラ・カルセドニー! 貴女は、あたくしたちの輪を乱す女。見逃すわけには参りませんわ!」

 いや、わけが分からないのだが。

「貴女は夜会から追放! 今後、貴女の夜会への出入りを禁じますわ!」

 いやいや。いきなりそんなことを言われても。
 本当に、わけが分からない。
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