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6話「一通の手紙」
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私は当分、夜会に参加できないことになった。
何でも、後から聞いた噂によれば、あの赤髪の女性は権力者だったらしい。いや、厳密には、権力者の娘、である。いきなりパトリーと話したことで彼女を怒らせてしまった私は、当分の間、夜会に参加できないという制裁を受けることになってしまったのである。
初めての夜会がこんな終わり方になってしまうなんて思わなかっただけに、ショックだ。
性格の悪そうな女だらけだったから、正直、夜会という場は私に似合うない場だとは思う。
でも、まさか、参加することさえできなくなってしまうなんて。
あの夜会から一週間ほどが経過した、ある日。
私が自室でぼんやり暮らしていると、可愛らしいショートヘアの侍女・アナが部屋を訪ねてきた。
「リリエラ様!」
非常に慌てた様子だ。
顔が青い。
「どうかしました?」
「に、西の国のヘリオドール家から……お手紙が!」
ヘリオドール家。なるほど、パトリーの家から手紙が来たのか。だが、あの夜会以降、私は彼に会っていない。既に一週間が経過しているが、今さら何の用だろう。
「見せてもらえますか?」
「は、はいっ! こちらになります!」
アナが差し出してきたのは、クリーム色をした横長の封筒。裏返すと、蝋のようなもので封されているのが見えた。本格的だ。
私は恐る恐る封筒を開封し、中から便箋を取り出す。
そこには、形の整った字が書かれていた。
『暇なら、会いたい。一応だが友人になったのだから、たまには落ち着ける場所で話そう。近いうちに使いを出すから、彼らに案内してもらい、うちへ来るように』
本格的な封筒から出てきた一枚だけの便箋にはそのようなことが書かれており、最後には『パトリー・ヘリオドール』という署名。
取り敢えず、いたずらではなさそうだ。
「どのような内容でしたか? リリエラ様」
私が手紙を読んでいると、傍に控えていたアナが小さな声で質問してきた。
声自体は控えめだ。だが、実際にはかなり気になっているようで、こちらを見つめる彼女の瞳は煌めいている。
こうも期待の眼差しを向けられては、答えないわけにもいかない。
だから私ははっきり答える。
「暇なら会いたい、だそうです」
するとアナは、目を大きく開き、両手を胸の前で合わせて発する。
「まぁ! それは素晴らしい!」
同年代とは思えないような反応が返ってきたことに少しばかり戸惑ってしまった。
ただ、純粋に嬉しそうな顔をしてもらえたことは、嬉しい。
人間は大体、他人のことでは喜ばない。特に、他人が良いことに遭遇した時ほど、喜ばないものだ。酷い目に遭ったのではないにもかかわらず喜んでもらえるというのは、本当にありがたいこと。
「ヘリオドール家といえば、西の国の大商人ですよね! そんなところの方から連絡を受け取るなんて、さすがリリエラ様です!」
アナは一人ハイテンションになっている。
だが、私はそこまで浮かれることはできない。
「けど、使いというのはいつ来るのでしょうか……」
「楽しみですね! リリエラ様!」
アナは妙に楽しげだ。
私の発言などまったくスルーである。
「お祝い——と言っては失礼かもしれませんが、せっかくなので、お茶をお持ちしますね!」
そう言って、アナはくるりと体の向きを変える。
「え。あ、大丈夫ですよ、お茶なんて……」
「そう仰らずに!」
彼女は妙にノリノリだ。
ついていけない。
「何が良いですか? やはりハーブティーでしょうか?」
「え……あ、そんな、申し訳ないです」
「カモミールにしますか? あ。お菓子もお持ちしますよ!」
いや、だから、まず話を聞いて?
私が一番言いたいのはそれだ。
ハーブティーでもカモミールでも、お菓子でも構わない。だからどうか、取り敢えず私の話を聞いてほしい。
その翌日。
ヘリオドール家の使いは、やって来た。
まさか、朝食中に訪問してこられるとは思わなかったが。
何でも、後から聞いた噂によれば、あの赤髪の女性は権力者だったらしい。いや、厳密には、権力者の娘、である。いきなりパトリーと話したことで彼女を怒らせてしまった私は、当分の間、夜会に参加できないという制裁を受けることになってしまったのである。
初めての夜会がこんな終わり方になってしまうなんて思わなかっただけに、ショックだ。
性格の悪そうな女だらけだったから、正直、夜会という場は私に似合うない場だとは思う。
でも、まさか、参加することさえできなくなってしまうなんて。
あの夜会から一週間ほどが経過した、ある日。
私が自室でぼんやり暮らしていると、可愛らしいショートヘアの侍女・アナが部屋を訪ねてきた。
「リリエラ様!」
非常に慌てた様子だ。
顔が青い。
「どうかしました?」
「に、西の国のヘリオドール家から……お手紙が!」
ヘリオドール家。なるほど、パトリーの家から手紙が来たのか。だが、あの夜会以降、私は彼に会っていない。既に一週間が経過しているが、今さら何の用だろう。
「見せてもらえますか?」
「は、はいっ! こちらになります!」
アナが差し出してきたのは、クリーム色をした横長の封筒。裏返すと、蝋のようなもので封されているのが見えた。本格的だ。
私は恐る恐る封筒を開封し、中から便箋を取り出す。
そこには、形の整った字が書かれていた。
『暇なら、会いたい。一応だが友人になったのだから、たまには落ち着ける場所で話そう。近いうちに使いを出すから、彼らに案内してもらい、うちへ来るように』
本格的な封筒から出てきた一枚だけの便箋にはそのようなことが書かれており、最後には『パトリー・ヘリオドール』という署名。
取り敢えず、いたずらではなさそうだ。
「どのような内容でしたか? リリエラ様」
私が手紙を読んでいると、傍に控えていたアナが小さな声で質問してきた。
声自体は控えめだ。だが、実際にはかなり気になっているようで、こちらを見つめる彼女の瞳は煌めいている。
こうも期待の眼差しを向けられては、答えないわけにもいかない。
だから私ははっきり答える。
「暇なら会いたい、だそうです」
するとアナは、目を大きく開き、両手を胸の前で合わせて発する。
「まぁ! それは素晴らしい!」
同年代とは思えないような反応が返ってきたことに少しばかり戸惑ってしまった。
ただ、純粋に嬉しそうな顔をしてもらえたことは、嬉しい。
人間は大体、他人のことでは喜ばない。特に、他人が良いことに遭遇した時ほど、喜ばないものだ。酷い目に遭ったのではないにもかかわらず喜んでもらえるというのは、本当にありがたいこと。
「ヘリオドール家といえば、西の国の大商人ですよね! そんなところの方から連絡を受け取るなんて、さすがリリエラ様です!」
アナは一人ハイテンションになっている。
だが、私はそこまで浮かれることはできない。
「けど、使いというのはいつ来るのでしょうか……」
「楽しみですね! リリエラ様!」
アナは妙に楽しげだ。
私の発言などまったくスルーである。
「お祝い——と言っては失礼かもしれませんが、せっかくなので、お茶をお持ちしますね!」
そう言って、アナはくるりと体の向きを変える。
「え。あ、大丈夫ですよ、お茶なんて……」
「そう仰らずに!」
彼女は妙にノリノリだ。
ついていけない。
「何が良いですか? やはりハーブティーでしょうか?」
「え……あ、そんな、申し訳ないです」
「カモミールにしますか? あ。お菓子もお持ちしますよ!」
いや、だから、まず話を聞いて?
私が一番言いたいのはそれだ。
ハーブティーでもカモミールでも、お菓子でも構わない。だからどうか、取り敢えず私の話を聞いてほしい。
その翌日。
ヘリオドール家の使いは、やって来た。
まさか、朝食中に訪問してこられるとは思わなかったが。
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