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前編

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 貴様には魅力などない。
 女としての価値など一切ない。

 よって、婚約は破棄とする。

 ――そんなことを、長い金髪が特徴的な婚約者ヴェルフィリーズに告げられた日の翌日。

「いやはや、もう、神やわ。惚れてしもてん。生涯を共にしてくれへん? 一生大事にするから、どうやろ?」

 西の国の王子ローロクより求められてしまった。

「え……? いや、あの、どういうことです……?」
「愛してしもてん」
「あ、ああ……そうですか……で、でも、その……すみません、今、かなり戸惑っています」
「こっちのことが嫌やから?」
「いえ! そうではありません! そんな失礼なこと!」
「ほんま? なら良かったわ。ふぅ~。もしかしたら見た目が無理やったんかな? て、思て」

 想定外の展開に戸惑ったけれど。

「考えてみてくれへん?」
「あ、はい」
「ほんま!? 考えてくれるん!?」
「はい」
「いやっほぉーい!!」

 どうやらローロクは本気で私との未来を考えているようで。

「でも、私で良いのですか? 間違いではないのですか?」
「何言うてんねん! 間違うわけないやん、ほんまおもろい女性やわ~」

 だから私も彼との未来を考えてみることにした。

 どうせヴェルフィリーズとは終わってしまったのだ、これはこれで良い機会かもしれない。

 こうして私はローロクとの未来へと歩き出す。
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