かなり年上の婚約者から婚約破棄を告げられましたが……これもまた人生ですよね、私は夢に生きていくことにします。

前編

　私には婚約者がいる。
　彼は私より二十以上年上だ。

　年齢が離れているということもあってか、彼は私をあまり良く思っていないようだった。彼はことあるごとに私を悪く言う。また、年齢が上だということを利用して、私のことを馬鹿にしてくるのだ。未熟、とか、若すぎて知能が、とか言われたこともあった。それも一度二度ではない。

　そんなある日のこと。

「悪いね、君との婚約は破棄とするよ」

　婚約者の彼は唐突にそんなことを言ってきた。

「なぜでしょうか……？」
「未熟過ぎるからだよ」

　年齢の差があることは事実だし、それゆえの感覚の違いがあることは分かるけれど……まともな理由も述べずに「未熟過ぎる」とか言われても困ってしまう。

「君は未熟だよ。僕と関わるには、僕の妻となるには、さすがに若すぎる。君ももう少し長く生きて、あと十年二十年生きてからでないと、僕には釣り合わないね」

　彼は優越感を絵に描いたような顔つきをしつつそう言った。

　彼は知らないのだろうか。
　皆が彼のことを本当はどう思っているか。

　彼はよく「あの人は誰にも相手されなかったから今でもあんななのよ」とか「独身だから全員がそうなわけじゃないけれど、彼の場合は人格に問題があって、それでずっと一人なの」とか言われていた。

　でも彼自身はそんなことは夢にも思っていないのだろう。