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後編

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「そうですか……はい、分かりました」
「いいね?」
「はい」
「ではね、さようなら」

 こうして私たちの婚約は破棄となった。

 けれども私を悪く思う人はいなかった。
 彼に問題があるということは周知の事実だったから。

 その後、私は実家に帰り、両親と暮らしつつ菓子職人を目指す道を選んだ。

 菓子職人のもとで数年の修行。そして、おおよそできるようになってきたら、師匠が営む店でお手伝い。そして、数年の手伝いを経て、徐々に菓子作りに参加できるようになってくる。そして、十年ほどが経つと、ようやく一人の菓子職人として働かせてもらえるようになった。

 ここはある意味でスタートと言えるかもしれない。

 でも、道のりは険しく、そして長い。

 だがそれでも、私は、まだこの道を行くつもりでいる。
 決意に、心に、迷いはない。

 そういえば最近になって元婚約者のその後について聞く機会があったのだが。

 元婚約者の彼はあの後一人の女性に惚れ込んだそうなのだが、その女性に冷ややかに拒否され、それによって大量の酒を飲むようになってしまったそうで。酔っ払ってたびたび問題を起こすようになってしまったそうだ。ただ、母親が動き回って守っていたため、その問題でどうにかなることはなかったみたいだが。

 しかし、最終的には酒の飲み過ぎで内蔵を悪くして、落命してしまったそうである。


◆終わり◆
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