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前編

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 三日前、婚約者から急に婚約を破棄すると告げられた。

 婚約者フルンベ・タークが言うには、私は真面目だし趣味が読書だしで、くだらなすぎるんだそうだ。だから彼は私のことが嫌いなのだそうだ。

 だが真実はそうではない、私はそれを知っている。

 彼が好きな女性というのは、自分の言いなりになる女性のこと。そして、気軽に濃厚な関わりに至ることのできる女性のことでもある。つまり、彼の欲望を満たさぬ者は、すべてくだらぬ女なのである。彼が価値があると判断する女性というのは、彼の言いなりになり大人しく従う女性だけ。

 彼の方から積極的に婚約破棄したいと言ってくるのは少し予想外だった。けれども、これは逆に好都合と言えるだろう。どのみちこうなる運命だったのだから。

 これまで集めてきた彼の女遊びの証拠。
 この剣さえあれば、私が有利であることは間違いない。

 婚約破棄の手続きの際にこれらの証拠品を見せれば、きっと、彼の方が悪いのだと証明できるはず。
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