彼は、婚約破棄を告げたために、何が起きたのか分からぬまま死を迎えました。

四季

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彼は、婚約破棄を告げたために、何が起きたのか分からぬまま死を迎えました。

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 昨日は雨降りだった。けれども今日は降雨もやみ、落ち着いた空模様。穏やかな風が吹いている。葉にはまだ滴が残り、しかし水分は徐々に蒸発していっていて。心地よい湿気が肌を包み込む。

 そんな日のこと。
 私は婚約者リベベルンに呼び出された。

 場所は、近所の人があまりいない公園。

「それで、用とは何ですか? リベベルンさん」
「婚約についてだ」
「婚約、ですか?」

 私は想像していなかった。
 次にかけられる言葉なんて。

「あんたとの婚約、破棄とする」

 だから驚いて――何も言えなくなってしまった。

「あんたは俺に相応しくない、俺の相手となる女性はもっと麗しく性格も良く有能じゃなければ。だから婚約者同士という関係のままではいたくない。よって、婚約は破棄、そう決めたんだ」

 刹那、数千羽の鷹のような見た目の鳥が上空から飛んできて、リベベルンを一斉につつき始める。

「あ!? あばばばばばばば! ばっばっあばっあばばばばばば!!」

 一羽に突かれるならそこまでではなかったかもしれないが。
 いかんせん数が多く。
 そのため一斉につつかれるだけでも涙目になっている。

 きっととても痛いのだろう。

「あばっあばっあばっ! あばばばば! あばっ! ばばばばば! ばっ!? ばばば!? あばあばばっ!? あばばっ! あばばばばばばばば!!」

 その後リベベルンは鳥たちに食べられた。
 彼は何が起きているのか分からぬまま死を迎えることとなってしまった。


 ◆


 あれから八年、私は、結婚し二児の母となっている。

 今は毎日とても忙しい。
 育児が大変で。
 けれども子たちと共に過ごせる幸せも感じられている。

 この道を選んだことを後悔はしていない。


◆終わり◆
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