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「貴様は不要! よって婚約は破棄する! 今すぐここから出ていけ、去れ!」突然そんなことを言われてしまいました。

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「貴様は不要! よって婚約は破棄する! 今すぐここから出ていけ、去れ!」

 婚約していた王子ウォッフェル・ド・ルブールレンからそんなことを告げられた。

 何の前触れもなかった。
 前もって何か言われていたわけでもなくて。

 でも彼の心は既に決まりきっていた。

「早く出ていけ!」
「……分かりました」

 王子に去れと言われてしまえばどうしようもなく。
 私はただ大人しく命令に従うしかなかった。

「リリーナ様可哀想ね」
「ここだけの話、ウォッフェル王子には恋人がいるとか……」
「ええっ。知らなかった、そうなの!?」
「どこまで本当かは知らないけれどね」
「ふぅん」
「それにしても酷いわねぇ、彼。あんな高圧的に、身勝手に婚約破棄するなんて」


 ◆


「ただいまより、王子ウォッフェル・ド・ルブールレンの処刑を執り行う!」

 ――あの婚約破棄の直後、隣国が攻め込んできた。

 それはとてつもなく大きな出来事だった。

 生活、環境、価値観。
 民たちの多くのものが開戦によって変わった。

 だがその影響は民らにとって意外と良いもので。

 これまで民から多くのものを搾取してきていた王家が倒れ、国は一応隣国の支配下に入るものの民は自由な生活を手に入れられることとなったのだ。

 どうやらルブールレン王家は民からそれほど愛されていなかったようである。


 ◆


 王家崩壊から数年、私は隣国から仕事のために引っ越してきた青年と意気投合して結婚。

 平穏。
 幸福。

 今、それらはすべて、この手の内にある。


◆終わり◆
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