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ヴィッタの休日(ティータイム)
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ヴィッタは薄暗い建物の中でお茶を飲むのが趣味だ。いや、もちろん一番の趣味は捕らえた者に色々とすることなのだが——、一人きりのティータイムも実は結構好きである。
彼女は友達がほとんどと言っていいほどいない。原因はもちろん性格だろうが、本人に聞かれたら殺されそうなので、あまり大きな声では言わないようにしておく。
給仕は自身が使役する大型悪魔を利用する。だから彼女は自分で何もしなくていい。出されたお茶を飲みながら独り言のようなものを漏らす。彼女の役割はそれだけだ。
「たーいーくーつー」
今日もヴィッタは一人でティータイムを楽しんでいるが、やはり退屈なようだ。何やらぶつくさ愚痴をこぼしている。
「いいおもちゃないかなぁ」
そこに大型悪魔が小さなお盆を持って現れる。
「クオォォォ」
「はいはい、ありがと」
ヴィッタは速やかにお盆からカップを取ると、中のお茶をグイッと一気に飲み干す。
「次持ってきてよねぇ。キャハッ」
「クオォォォ」
しかし大型悪魔はその場を離れない。
ヴィッタが眉をひそめる。
「……聞きたいことぉ?」
「クオォクオォォォ」
どうやら意思疏通ができるようだ。なかなか凄い。
「ヴィッタの過去? キャハッ、いいよ。今日はご機嫌だから特別に話してあげる!」
大型悪魔は彼女のすぐ隣にしゃがみこみ大人しくなる。あの大型悪魔は随分手懐けられているようだ。
「ママはお医者さん、パパは軍人さん。ヴィッタは一人娘。ママとパパは仲良くなくて、パパがママをいつも虐めてたねぇ」
ヴィッタは他人事のように楽しそうに語る。時折カエルチップスを口に放り込みながら。
「大好きなママをパパが殺そうとしたから、ヴィッタはパパを殺っちゃった。キャハッ」
愛らしい容姿に似合わない殺伐とした言葉を並べ、とても楽しそうだ。
「ママはその後死んじゃったけど、バイバイって言えたから、まぁいいや。キャハッ。それからカルチェレイナ様に出会って四魔将になって、終わりっ」
とても簡素化された話だったが彼女の狂気はよく伝わった。大型悪魔は拍手している。
「ヴィッタはママのこと嫌いじゃなかったけどねぇ、カルチェレイナ様みたいなママが良かったかも。ヤーン! カルチェレイナ様がママなんてっ、キャハッ! キャハハハッ!」
ヴィッタは両手を赤面した頬に当て、首を左右に激しく振る。どうやら妄想が暴走している様子。
「クオォォォ」
大型悪魔が何か言う。
「え、家族が欲しいのぉ?」
「クオォ」
「そーねぇ……キャハッ! ヴィッタが作ってあげようかなぁ。もしアンタがよく働いたら、アンタに家族を作ってあげる! キャハッ」
その言葉が真実が否かは分からない。その時の気分で適当に言っただけかもしれないし、家族を知らない大型悪魔に少し同情したのかもしれない。
何にせよ、彼女の思考は誰にも読めない。
恐らく、カルチェレイナ様でも、ヴィッタのすべてを理解することは不可能だろう。
——とある悪魔の日記より——
◇終わり◇
彼女は友達がほとんどと言っていいほどいない。原因はもちろん性格だろうが、本人に聞かれたら殺されそうなので、あまり大きな声では言わないようにしておく。
給仕は自身が使役する大型悪魔を利用する。だから彼女は自分で何もしなくていい。出されたお茶を飲みながら独り言のようなものを漏らす。彼女の役割はそれだけだ。
「たーいーくーつー」
今日もヴィッタは一人でティータイムを楽しんでいるが、やはり退屈なようだ。何やらぶつくさ愚痴をこぼしている。
「いいおもちゃないかなぁ」
そこに大型悪魔が小さなお盆を持って現れる。
「クオォォォ」
「はいはい、ありがと」
ヴィッタは速やかにお盆からカップを取ると、中のお茶をグイッと一気に飲み干す。
「次持ってきてよねぇ。キャハッ」
「クオォォォ」
しかし大型悪魔はその場を離れない。
ヴィッタが眉をひそめる。
「……聞きたいことぉ?」
「クオォクオォォォ」
どうやら意思疏通ができるようだ。なかなか凄い。
「ヴィッタの過去? キャハッ、いいよ。今日はご機嫌だから特別に話してあげる!」
大型悪魔は彼女のすぐ隣にしゃがみこみ大人しくなる。あの大型悪魔は随分手懐けられているようだ。
「ママはお医者さん、パパは軍人さん。ヴィッタは一人娘。ママとパパは仲良くなくて、パパがママをいつも虐めてたねぇ」
ヴィッタは他人事のように楽しそうに語る。時折カエルチップスを口に放り込みながら。
「大好きなママをパパが殺そうとしたから、ヴィッタはパパを殺っちゃった。キャハッ」
愛らしい容姿に似合わない殺伐とした言葉を並べ、とても楽しそうだ。
「ママはその後死んじゃったけど、バイバイって言えたから、まぁいいや。キャハッ。それからカルチェレイナ様に出会って四魔将になって、終わりっ」
とても簡素化された話だったが彼女の狂気はよく伝わった。大型悪魔は拍手している。
「ヴィッタはママのこと嫌いじゃなかったけどねぇ、カルチェレイナ様みたいなママが良かったかも。ヤーン! カルチェレイナ様がママなんてっ、キャハッ! キャハハハッ!」
ヴィッタは両手を赤面した頬に当て、首を左右に激しく振る。どうやら妄想が暴走している様子。
「クオォォォ」
大型悪魔が何か言う。
「え、家族が欲しいのぉ?」
「クオォ」
「そーねぇ……キャハッ! ヴィッタが作ってあげようかなぁ。もしアンタがよく働いたら、アンタに家族を作ってあげる! キャハッ」
その言葉が真実が否かは分からない。その時の気分で適当に言っただけかもしれないし、家族を知らない大型悪魔に少し同情したのかもしれない。
何にせよ、彼女の思考は誰にも読めない。
恐らく、カルチェレイナ様でも、ヴィッタのすべてを理解することは不可能だろう。
——とある悪魔の日記より——
◇終わり◇
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