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虹を見る時、私は複雑な想いの海を泳ぐ。~婚約破棄とプロポーズと~
しおりを挟む虹を見る時、私は複雑な想いの海を泳ぐ。
そう、私の記憶にはいつだって虹がいる。
良いことも。
悪いことも。
そのすべてに虹が繋がっているのだ。
そうね、思えば、愛していた彼から関係の解消を告げられた日も虹がかかっていた。
私は彼とずっと一緒にいたくて、でも、彼は私を何とも思っていなくて。ただの婚約者、それだけの存在にしか思っていなくて、それで裏で好き放題女漁り。私は耐えきれなくなってそのことについて意見を言ってしまい、その勢いで婚約破棄を宣言された。
あのほろ苦い記憶の中に、虹はある。
彼と別れた後、涙越しに見上げた空。
そこには虹がかかっていた。
確かあれは雨上がりの午後だった。
けれども、それから一年ほどが経って、今の夫である彼からプロポーズされた日も空には虹がかかっていた。
あの時は心が雨上がりみたいで。
二人見上げた空にかかる虹の橋に、前とは違った涙をこぼして。
――色々あってもこの先ずっと一緒にいようね。
そんな風に誓い合った。
だから、今はもう、虹は悪いことの象徴ではなくなった。記憶は塗り替えられたから。それを目にしても苦痛ばかりを感じるといったことはない。
ただ、時折不思議に思うのだ。
どうして虹はいつも私の前に現れるのだろう、と。
節目に現れて。
記憶に深く刻まれて。
それが虹の意思なのだろうか?
……そう考える時、私は複雑な思いの中にいる。
でもいいの、もう幸せは掴めたから。
かつて私を傷つけた彼は結局なんだかんだで女絡みで揉めて社会的に死亡したようだけれど、そんなことはどうでもいいわ。
私が生きるのは私の人生だけ。
だから、私が幸せならそれでいいの。
望むことは一つ。
私と、私の家族が、いつまでも永く幸せでいられること。
――ただそれだけ。
◆終わり◆
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