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3話
しおりを挟むちなみにアウファンはというと、国民が戦場に駆り出されている最中だというのに二人の恋人とデートを繰り返していた。そして、そんなある日、海の国からの刺客によって殺害された。
その間、イルはずっと海の国の城にいた。
もっとも、まだ完全に戦いが終わっているわけではないけれど。しかし海の国は圧倒的に優位だ。もうほぼ勝っているようなものである。だから、状況はある程度安定はしている。
ちなみに、これまで彼女に色々なことを伝える役をしていたのは、カニに似た外見の男性だ。
彼はイルを小さな頃から見守ってきた者だ。
家族ではないけれどそれ以上に近い距離で生きてきたのである。
「状況はいかがですか?」
イルは今、一応、安全な場所で生きている。
けれども彼女は外のことが色々気になっている。
特に今のような状況では。
まだ戦っている者がいると知っていながら見て見ぬふりをすることはできない。
「姫様、どうか気になさらないでください。一応もう戦いは落ち着いてきていますし」
「気になりますよ、この国のことですから」
「そうですか?」
「ええ。それは、姫として当然のことです」
「どうか体調崩されませんよう……」
「そうですね。心配をかけてしまってはいけませんね」
◆
あれから数年が過ぎ、イルは女王となった。
海の国の貴族である青年と結婚しているが、それでも、彼女こそが女王だ。
イルは今、とても忙しくしている。
けれども日々楽しく生きられている。
「イル様! これからどこへ?」
「あ、ウィックさん」
ウィック、というのは、イルの夫の名だ。
「視察へ行ってきます」
「視察、ですか?」
「はい」
「ああ、そうだ、少し良いですか? ちょっと……」
「何でしょう」
「今夜……お茶どうですか?」
「お茶ですか? まぁ! それは良いですね!」
イルは海の国のために生きることを選んだ。
感情も。
愛も。
負のものは捨て去って。
「ではまた夜にお会いしましょう」
「は、はい! イル様、ありがとうございます」
「いえいえ、そんなに緊張なさらないでください。私たちは夫婦なのですからこれからも気軽に声をかけてくださいね」
美しき姫だったイルは、色々な経験を経て、偉大な女王へと変わってゆく。
そしてこれから先も――様々な出来事に出会い、成長し、歩んでゆくに違いない。
◆終わり◆
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