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前編
しおりを挟む――この花が咲いた日、貴女に幸せが降り注ぐことでしょう。
かつて私は不思議な体験をした。
ある夜のことだ、七色に光る瞳を持つ女神が目の前に現れてそう言って一粒の種を手渡してきたのだ。
女神はそれを育てるように言った。
それで、私はその種を育てることにしたのだ。
夢でもみていた?
幻とか?
色々考えもしたけれど、あの厳かな雰囲気の中で言われたことを無視することは私にはできなかったのだった。
そして、ようやく花が咲いた日。
「マリーア。お前との婚約、破棄する」
婚約者アダルクからさらりとそんなことを告げられた。
「え」
「だから、言葉そのままの意味だよ。婚約は破棄する、って言っているんだ」
空気が凍りつく。
「ま、待って、そんな……どうして……何か問題があった? もしそうなら先にそう言ってほしいの。もしかしたら解決できることかもしれないし……」
何とか言葉を紡ぐのだが。
「いや無理だ。絶対に。だからすべてを告げる必要はない」
ばっさりと言いきられてしまった。
「なんにせよ、これはもう決定事項だ。何を言われようともこの決定が覆ることはない」
「そんな」
「当たり前だろう? そんな生温い決意で婚約破棄なんて告げるはずもない」
「えええ……」
「ま、そういうことだよ。じゃあなマリーア。永遠に……さよなら」
こうして私は関係の終焉を押し付けられたのだった。
信じられない思いだった。
まさか急にこんなことになるなんて。
それにしても、あの時の女神の言葉は嘘だったのだろうか? 花が咲いた日幸せが降り注ぐと彼女は言っていたのに、現実は真逆。花が咲いた日に絶望へ叩き落されてしまったではないか。あの言葉は一体何だったのか? 悪魔の囁きか何かか?
……今さらあれこれ考えても無駄、か。
しかしどうしてもすっきりしない。
私の人生はこれからどうなってしまうのだろう?
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