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1話
しおりを挟む我が婚約者ヴィーダーンは、婚約の前から今日に至るまでの二年以上にわたって私を虐げてきた。
彼はどこまでも心ない人だった。
それゆえ彼は他人を平然と傷つける。
そしてその特性は特に私に対して現れていた。
悪魔のような彼でも、一応、外では余所行きの仮面を着けているのである。
でも、だからこそ、私は誰にも相談できなかった。
彼は余所ではそれなりに良い人を装っている。それゆえ私が「酷い人なんだ」「虐げられている」などと言っても信じてもらえるような状態ではなくて。
彼はあらゆる手段を利用して私の逃げ道を塞いでいた。
誰かに相談することも婚約破棄することも不可能、ただじっと耐えているしかない――そんな状況を彼は見事に作り出していたのだ。
だが転機が訪れる。
たまたまヴィーダーンの家へやって来た彼の友人カイールが、ヴィーダーンが私を虐めているところを目撃したのである。
カイールは見て見ぬふりをしなかった。
「もしかして、いつもあんな感じなの?」
「……あの、いえ。放っておいてください。二人の……問題なので」
「そうは思えないよ!」
「え……」
「あんないじめ、それに暴言、それが日常であるなら君はヴィーダーンのもとから逃げるべきだ。耐えていても意味なんてない、それに、あんなことをずっと続けていたら君が壊れてしまう」
カイールは個人的に私に接近し、ヴィーダーンとの関係について口を出してくれて。
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