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3話
しおりを挟む「……結婚は、その……あまりにも突然で、まだよく……分からないの、ですが」
「お嫌ですか?」
「いえ……拒否とまでは言いませんが……」
「では考えてくださるということですか?」
「そうですね……はい、その……表現が下手で申し訳ありません……」
すると彼の表情がぱあっと明るくなった。
「良かった! 検討していただけるだけでも嬉しいです!」
◆
あれから一年半、私は王子の妻となり生きている。
「書類お持ちしました!」
「あ、はい、ありがとうございます」
王子の妻にはいくつもの役目がある。
仕事がたくさんあるのだ。
けれどもそれは私にとって苦痛ではなかった。
意外と私に向いていたのだ、そこでの仕事は。
「ええと……こちらのものは持ち帰っても問題ないのでしょうか?」
「はい、問題ありません」
それに嬉しいこともある。
城内で働いている人たちは私を温かく見守ってくれている。そして頑張れば頑張っただけ評価してくれる。皆優しさを持っている人たちで、純粋な声色で褒めてくれる人も多い。
――皆に、最高の感謝を。
「ああ貴女は本当に……素晴らしいお方ですね、仕事もばりばりこなされていて尊敬します」
「いえいえ、そんな。私はまだまだ未熟で。素人ですし」
「ですがとても優秀です!」
「あ、は、はい……ありがとうございます、嬉しいです。これからより一層頑張ります、努力します」
ちなみにフルールはというと、あの後結婚詐欺に遭って一文無しになってしまい空腹に耐えかねて街中の商店で盗みを働いたらしくそれによって現行犯逮捕されてしまったそうだ。
で、牢屋送りになった。
彼は人権をはく奪され、今は奴隷のように働かされ続けているらしい。
だがまぁ自業自得だろう。
今、現在、現状――すべては彼が選んできた道の果てに在るもの。
それ以上でもそれ以下でもないのだから。
善良な人が騙されて災難に見舞われたのであれば多少同情もしただろう。
でもこの場合そういった話ではない。
だから、私が彼に対して同情することは、きっと一生ない。
◆終わり◆
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