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2話
しおりを挟む「もういい! がっかりだ! よって、婚約は破棄とする!」
「ええっ……」
「お前に対する愛はもう消えた!」
「えええー……」
こうして私はフルールに捨てられたのだった。
友人らと海へ来ていた。
ただそれだけだったのに。
悪いことなんてしていないはずなのに……。
「何それ酷い! 海に来てただけで婚約破棄!? あり得ないっ」
「酷すぎるわ……あまりにも……」
「しばいてくるッ」
「待って待って待って! 待ちなさい! 駄目だってば!」
友人らは皆味方をしてくれた。
が、それでももう取り戻せないものもある。
「元気出して!」
「大丈夫、大丈夫だからね」
ただ、皆が励ましてくれたので、そういう意味では元気になれた気がした。
◆
フルールに捨てられた日からちょうど一ヶ月が過ぎた。
「実は三歳の頃からずっと貴女を想っていました」
「え……」
私は今、理解不能な展開に巻き込まれている。
目の前で片膝を立てて座り澄んだ瞳でこちらを見上げてきている彼は、この国の王子である。
「ですからどうか、僕と結婚してください」
フルールに捨てられたことなどもうどうでもいいのかもしれない――脳内のどこかにそんな風な思考の欠片が芽を出してくる。
確かにすぐに理解できる内容ではない。
あまりにも大きなことだから。
けれども嫌な思いを感じないでいられているのは、恐らく、彼の瞳から滲み出る心の色がどこまでも澄んでいて真っ直ぐだからだろう。
打算なんてない。
まるで子どものように無垢な色。
それが彼の瞳に映し出されているものだ。
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