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後編

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 ◆


 婚約破棄後、愛する女性と毎日のようにいちゃついていたヴィッジ。

 彼は今まさに自由を謳歌していた。

 色々な事情も絡んで決められた婚約者ではなく、心の底から雄として愛する女性と共に過ごす日々――それは彼にとって何よりもの幸福であった。

 だがある日の儀式の途中。

「いーっひっひ! いーっひっひ! おいーっひひっひっ! おいひっひ!」

 ヴィッジは急に身体が動き出してしまい、よく分からないフレーズと共におかしな舞いを披露してしまう。

 彼の意思ではない。
 しかしどうやっても止められない。

「いーっひっひ! いーっひっひ! いっひひいひひひいっひひいひひ! いひひひいひひひ! おいーっひっひっひひ! おーいっ! おーいひ! おっひひおいひっ! おいーっひひっひっおいひっひ!」

 静寂の中、怪しげな踊りを披露し続けることとなってしまうヴィッジ。

「何あれ……キモ……」
「一体どうしてしまったの……?」
「ま、まさか……悪魔でも、憑いたんじゃ……」

 儀式の参加者らに広がる動揺。

「いーっひっひ! いーっひっひ! おいーっひひっひっ! おっひ! おっひひ! おーっひおーっひ! おひひひひひひ! おひ! おひ! ひーっひひひっひおっひひひっひひひ! おひ!」

 突如意味不明な踊りを始めたうえ奇声に似た声を発し続けているヴィッジの姿を見た者たちは、そのほとんどが「何かに憑かれたのでは」と考えた。そしてそれは国王も同じで。国王はヴィッジを移動させると急いでお祓いの手続きを進めた。そしてヴィッジはお祓いをしてもらうこととなる。しかしそれでもなお状態は回復せず、結局元通りにならないまま踊り続けた果てに力尽きて亡くなったのだった。

 それがある呪術師の呪術による奇行であったとは、誰も知らない。


 ◆


 色々あったけれど、あれから幸せな結婚ができた。

 今はもう苦しみなどない。
 ヴィッジと別れたことすらも今は良いことだったと思えている。

 心の底から愛することのできる、真っ直ぐに愛おしく思える、良き夫と共に生きてゆく。


◆終わり◆
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