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3話
しおりを挟むこの日以降、ネルネンは変わった。
それまでの明るさは消え、一日のほとんどを泣いたり暗い顔をしたりして過ごすようになっていった。
過剰と思えるほどにあった自信も急激に薄れて。それこそ別人になったのかというくらい、自信がない人間になっていったのだった。
ただ、気の毒だけれど、私としては助かった。
絡まれない、嫌みを言われない、見下されない――ただそれだけのことでも毎日が晴れやかになる。
少し軽い心でいられること、それだけでこれほどまでに快適に過ごせるとは。
さすがに想像していなかった。
ただ一つの変化でここまで心地よく日々を歩めるなんて。
嘘みたい。
そして、夢みたい。
◆
あれから数年、私は気の合う男性と巡り会うことができ、結婚した。
夫となった彼はいつも優しい人だ。彼は、どんな状況にあっても思いやりの心を持って接してくれる。あまり男性的ではないかもしれない、が、一緒にいて心地よい人である。
お互いに常に思いやりを大切にしながら歩んでゆけたなら、きっと、良い関係を築けることだろう。
今はとても幸せ。
だからこそ、この幸せが消えてしまわないように努力して歩んでいこうと強く思っている。
ああ、そうそう、そういえば。
ネルネンはアロスに婚約破棄されたあの時以降いまだにずっと体調がすぐれないそうで、実家でひきこもり気味に暮らしているそうだ。
単に実家にいるというだけならまだ良いのだろう。
健康であれば日々楽しいだろうし。
結婚がすべてというわけでもないのだし。
ただ、彼女の場合は健康で家にいるというわけではない。
だから大変そうだ。
本人も、親も。
廃人となったかのように大人しくしているかと思えば急に泣き叫んだり酷く怒り出したりする娘と、その介護をしなくてはならない両親――誰も幸せにならない。
ただ、家から脱出した私にはもう関係のないこと。
だから彼女らを心配したりは一切しない。
◆終わり◆
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