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3話
しおりを挟む「何よ! どうしてお姉さまだけにそんな話が来るのよ! あんな地味で馬鹿な女だっていうのに! 許せない、許せない……ぜーったいに許せないわ! 最低!」
その話を知ったマリリはまたしても荒れていた。
「さようなら、マリリ」
「はぁ? 生意気! あんたみたいな女、どうせ遊ぶだけ遊ばれて捨てられるのよ!」
「元気でね」
「ふん! 見ていなさい。あたしの方が絶対良い男を捕まえるんだから!」
「……ええ、それを願うわ」
私はもうマリリに会うことはないと思う。
だって未来へ進むから。
ここではないところで生きてゆく、その固い決意を胸に置いているから。
その後私は貴族の青年と結ばれ、愛され、彼のもとで穏やかに暮らせることとなった。
もう家へは帰らない。
その考えを彼は理解してくれて。
おかげで今、穏やかな日常を堪能できている。
「今日も良い天気だね」
「あ、そうですね」
「こういう晴れの日、好きだなぁ」
「私も好きです」
夫との関係は良好そのものだ。
「そういえば、初めて君がここに来てくれた日も……こんな風に晴れてたなぁ」
「あ、そうですね。あの日は日射しが強くてちょっと視界が悪かったです」
「苦労させてごめんね?」
「ああ、いえ、そういう意味で言ったわけではないんですよ。私、ここへ来ることができて良かった。本当に。今もまだ強くそう思っています」
途中、一度マリリが屋敷にやって来て、私に関する悪い話――もちろん嘘だが――そういうものをたくさん吐いてくる事件はあった。
「そう言ってもらえたら嬉しいなぁ」
「これからもこんな風にいられたらいいなって……そう思っています」
でもその時夫は私の味方になってくれて、冷静に対処してくれて。それによってマリリを追い払うことができたし、彼女が二度と屋敷に来られないようにすることもできた。
マリリがこの屋敷に近づいたらそれは即座に罪となる――そうなるよう、彼は手を下してくれたのだ。
「いつまでも、こうして、晴れた空を一緒に見上げていたいですね」
「うん、そうだね」
ちなみにマリリはというと、結局あの後誰からも相手にされず婚約の申し込みもなくという状況だそうで、今も両親と共にあの家に住んでいるままらしい。
また、人生が思い通りにいかず大層荒れているそうで、両親は彼女の扱いにかなり苦労しているそうだ。
でも、まぁ、彼らが育てた女なのだから……自業自得ね。
今は離れたところからそう思うだけ。
◆終わり◆
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