本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。

四季

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前編

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 親に紹介されて出会った青年アルビシレと婚約することとなった私は、流されるように彼と生きることを決めつけられてしまった。

 でも、それに関しては、そこまで問題だとは思っていなかった。

 親がそれを望むならそれでもいい。恋人なんていなかったし、特別誰かと結ばれたいという気持ちもなかったし。だから、親に決められた道を行くのでも構わないと、そう思っていたのだ。

 だが。

「ミーチェちゃぁ~ん、今日も可愛いねぇ~、それ、水着?」
「うふ。そうでっす」
「おちゃれだなぁ~、最高だよぉ~」

 ある日の昼下がり、借りていた本を返そうと思ってアルビシレの家を訪ね彼の部屋へ入ろうとしたところ、何やら不穏な声が聞こえてきた。

 僅かに開いた扉の隙間から様子を窺う――どうやらアルビシレが女性を室内へ入れているようだ。

「かわぁ~いいぃ~ねぇ、ミーチェちゃぁ~ん」
「可愛い? 可愛い?」
「可愛いよぉ~最高だよぉ? 至高の女体だぁ~。……ちょこっとだけ、触れてみてもいいかい?」

 もう少し詳しく見てみよう。
 そう思って様子を確認していると。
 彼は女性に触れ始める。
 両手の指を芋虫のようにうにうにさせながらのタッチは不気味としか言い様がない。

「あら、こんにちは」

 そこへ通りかかったのはアルビシレの母親。

「あ、こんにちは」
「どうしたの? そんなところで。うちの息子に何か?」

 不思議そうな顔をしているアルビシレの母親。

 無理もないか、と思う。
 婚約しているとはいえ、部屋の前でうじうじしていたら、さすがに不自然というものだろう。

 でも今回は仕方がないのだ。
 女性を連れ込んでいるところに堂々と入っていくのは難しい。

「本を返しに来たのですが……」
「婚約しているのだから入っても良いのよ?」
「その……そうしたいところなのですが、何やら、女性と一緒にいらっしゃるようで……」

 事情を聞いたアルビシレの母親は堂々と扉を開けて部屋に入っていく。

「あんた! 何してるの!」

 アルビシレはまだ女性の身体を指先で意味もなくこすっている。

「……ぎょっ」
「女を連れ込んで……!? 馬鹿! 許されないわよ、そんなことして!!」

 その後私とアルビシレの婚約は破棄となった。
 アルビシレの母が息子の悪い行いから目を逸らさずにいられたために話は順調に進み、手続きは半年も経たず無事終わった。
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