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前編
しおりを挟む「何なんだよお前! ちょっと酒飲んで遊んだだけだろ! そのくらいの小さいことを責めるなんて、お前はクズか!」
青空の下、始まる喧嘩。
我が婚約者ローデムが先日私ではない女性と一緒に酒を飲んだうえ余計なことばかりしていたことが発覚した。それについて私は意見を述べたのだ。けれどもそれが彼の導火線に火をつけることとなってしまって。そして今、彼は、激怒という炎を燃やし始めた。
「クズ、は言い過ぎです」
こちらは感情的にはなっていない――にもかかわらず向こうは驚くくらい感情的になっている。
そんなに怒って何がしたいのか。
私が言いなりでなければそんなに気に入らないのか。
「はぁ? 男に対して意見を言うなんてクズだろ!」
彼の顔にはびきびきと怒りの筋が浮かび上がっている。
「ああいうことはやめてほしい、そう言っただけです。意見を言うことくらい自由なはずです」
今にも殴りかかってきそうな勢いだ。
「自由じゃねえ!!」
「どうして……」
「お前は俺と結婚するんだろ!? 妻になるんだろ!? それはつまり、一生を俺に売るようなものだ。つまり、お前に人権なんてないんだよ!!」
恥ずかしくないのだろか? そんなことを言って。
いい年して相手の人権を否定するなんて……。
「酷いですよ、それは」
「口ごたえするなクズが!!」
「ですから言い過ぎです! 相手を罵倒することが生きがいなのですか? 相手は傷つきます、だからそういうことはやめてください」
「うるせえ!! っ、もういい……婚約は破棄する!! で、今すぐこの世から消え失せろやァッ――」
彼はついに手を出そうとした。
殴ろうと腕を振りかぶる。
そして大きな拳をこちらへ――しかし。
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