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後編

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「え」

 突如上から落下してきた刃物がローデムの身に当たり、そのまま彼はほぼ真っ二つになってしまった。

「いやああああ!!」

 思わず叫んでしまった。

 その時、近くの木の上の方から「すみませーん、落としてしまって……大丈夫でしたー?」と声が飛んでくる。

 どうやら、木の枝を切っていた者が落とした刃物だったようだ。

 ローデムに命中したのはたまたまだったのだろうが……そう思えば思うほどにたまたまとは恐ろしいものだと感じた。

 でも、おかげで殴られることは避けられた。

 そういう意味では幸運だった。


 ◆


 あれから何度季節が巡っただろう。

 ローデムはあそこで亡くなってしまったけれど、おかげで縁が切れ、後にもっと良い性格をしている人と出会えた。

 そして彼と結ばれることに成功。

 今は彼と穏やかに幸せに暮らせている。

「そっか、そんなことがあったんだね……昔……」
「そうなの」
「それで、相手の人は亡くなってしまったんだ?」
「そう……あの時はしばらく震えが止まらなかったわ。たとえたまたまだとしても……それでも、目の前で人が……」

 夫は、ローデムという男がかつていたことを知っていて、それでもなお私との道を選んでくれた。

「それは怖いよね、たまたまでも怖過ぎるよね」
「ええ……」
「でも、それがあったからこそ、僕は君に出会えた」
「そうね」

 ――ありがとう、愛しています。

「私も、貴方に出会えて良かった」


◆終わり◆
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