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前編

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「なぁ聞いたか?」

 アンネマン、彼は、私と婚約者アブレルの共通の知人。

「アブレルさ、お前との婚約、破棄することにしたらしいぜ」

 アブレルからは何も聞いていない。そのため、アンネマンの言葉が事実かどうかは、その場では判断できなかった。しかし完全な嘘と決めつけることもできなくて。

「ふーんそっか。じゃあ確認してみるようにするね。ありがとう」

 その場では、それだけ返しておいた。

 しかし、婚約破棄とは、これまた唐突だ。
 そのような重大なことがこんなにもあっさり告げられたのだとしたら、ある意味驚きである。

 その日の夜空はいつになく綺麗だった。


 ◆


 翌日、アブレルに連絡し、「アンネマンから婚約破棄したいということを聞いたけれど本当か?」といった内容のことを尋ねてみた。

 するとアブレルは認めた。

 婚約破棄したいと思いながらも自分で直接言うのは勇気がなく嫌だったそうだ。

 アンネマンの言っていたことは事実、そう確定してしまった。

 つまり、私は、本当に切り捨てられることとなったのである。

 せっかくここまで仲良くしてきたのに、と残念に思う部分はあったけれど、私は彼の望みを受け入れ彼の前から去ることを選択した。

 私だって、同じ一度きりの人生なのなら愛される場所にいたいのだ。
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