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3話
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説明を聞けば納得できた。
怪しい人ではないのかな、なんて思えてくる。
その後私は彼の提案を呑んで家を出ることにした。
荷物をまとめると書き置きも残さずに家を脱出する――幸いその時母は睡眠中だったのですんなり抜け出せた。
その日の晩から母は三日三晩怒って暴れていたようだ。
◆
あの後母は町で衝動的に傷害事件を起こして逮捕された。
これまでは私に当たり散らすことで好き放題発散できていた。しかし私が消えたことでそれはかなわなくなり。その結果苛立ちが溜まってしまい、そういう形で爆発したのだろう。
彼女の悪質さはこれで世に出るはずだ。
これまでは私がすべて受け止めていたから彼女は社会的に終わらずに済んでいた――でももうそれは終わり――私がいなくなった今、彼女の悪の部分を隠し守る要素はなくなった。
「娘さんも酷い目に遭わされていたみたいだものねぇ……ああ、恐ろしい恐ろしい」
「まっさか他人にまでやるなんてね」
「叫びながら殴りかかったんでしょう? まるで獣ね。しかもそれが無差別だっていうんだから、怖すぎるわね」
「ああ、会わなくて良かった」
「ちょっとどうかしてるわよね、急に襲いかかるなんて」
◆
あれから数年。
私は保護された施設にて職員の手伝いをしつつ暮らしている。
ここはとても温かな場所。
いつだってそっと寄り添っていてくれる。
だから私はこの施設を愛している。
私が愛するのはこの施設だ。ここは私を地獄から救い出してくれた場所、つまり王子さまみたいなもの。そういう意味で、ここは、私にとって何よりも特別な存在なのである。
ちなみに母はというと、強制労働中に見張りの男に殴りかかろうとして射殺されたそうだ。
◆終わり◆
怪しい人ではないのかな、なんて思えてくる。
その後私は彼の提案を呑んで家を出ることにした。
荷物をまとめると書き置きも残さずに家を脱出する――幸いその時母は睡眠中だったのですんなり抜け出せた。
その日の晩から母は三日三晩怒って暴れていたようだ。
◆
あの後母は町で衝動的に傷害事件を起こして逮捕された。
これまでは私に当たり散らすことで好き放題発散できていた。しかし私が消えたことでそれはかなわなくなり。その結果苛立ちが溜まってしまい、そういう形で爆発したのだろう。
彼女の悪質さはこれで世に出るはずだ。
これまでは私がすべて受け止めていたから彼女は社会的に終わらずに済んでいた――でももうそれは終わり――私がいなくなった今、彼女の悪の部分を隠し守る要素はなくなった。
「娘さんも酷い目に遭わされていたみたいだものねぇ……ああ、恐ろしい恐ろしい」
「まっさか他人にまでやるなんてね」
「叫びながら殴りかかったんでしょう? まるで獣ね。しかもそれが無差別だっていうんだから、怖すぎるわね」
「ああ、会わなくて良かった」
「ちょっとどうかしてるわよね、急に襲いかかるなんて」
◆
あれから数年。
私は保護された施設にて職員の手伝いをしつつ暮らしている。
ここはとても温かな場所。
いつだってそっと寄り添っていてくれる。
だから私はこの施設を愛している。
私が愛するのはこの施設だ。ここは私を地獄から救い出してくれた場所、つまり王子さまみたいなもの。そういう意味で、ここは、私にとって何よりも特別な存在なのである。
ちなみに母はというと、強制労働中に見張りの男に殴りかかろうとして射殺されたそうだ。
◆終わり◆
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