「お前はどうしようもない、救いようのない低級女だ」なんて言っていて良いのですか? 貴方とその家を支援しているのは我が家なのですよ?

四季

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前編

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「お前はどうしようもない、救いようのない低級女だ」

 婚約者アードレッドは私を呼び出すと真剣な面持ちでそんなことを言ってきた。

 低級女、て……さすがに失礼過ぎやしないか、少々。

 彼はもう恩を忘れてしまったのだろうか?

 そう、私の実家が彼と彼の家を経済的に支援して救ったという恩を。

「よって、婚約は破棄とする」

 彼はそれが当たり前であると言うかのようにそんなことを告げてくる。

「婚約破棄……本気で仰っているのですか?」
「当たり前だろう」
「ですが……そうなると、支援は打ち切りとなってしまうかと思われるのですが、それでも良いのでしょうか」
「ああ。俺の心はもう決まっているんだ――愛する人とだけ生きる、と」

 そういうことか。

 すべてを察した。
 既にその相手がいるということなのかもしれない。

 ならばもう何を言っても無駄だろう。

「分かりました、では」
「受け入れるのだな?」
「はい。婚約は破棄ということで、承知しました」

 言えば、彼は満足げな顔をした。

「話が早くて助かる」

 どうやら彼は先のことは考えていないようだ。我が家の支援がなくなればどうなるか、彼の思考はそこにまで至っていない様子である。恐らく彼は婚約破棄のことばかり考えていてその後の現実的な部分については思考を巡らせていないのだろう。もっとも、それが自然になのか敢えてなのかは定かでないが。

「実は俺、愛している女性がいるんだ。今。彼女、とっても美しく可愛らしい人でな、会うたび惚れ込み魅了されているんだ。ああ、これでようやく彼女との道を歩み始めることができる……嬉しいよ」

 そう語るアードレッドの表情は不気味なほどにうっとりしたものだった。

 でも、彼は今、確かに幸せなのだろう。

 ならそれもまた人生だ。
 たとえ未来がどうなったとしても。

 今ある幸せ、それを優先するならそれもまた彼の人生であり彼の選択――そこは尊重しようではないか。

 他人にはあれこれ言う権利はないだろうし。
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