呪われの王子は私と離れた途端再び災難に見舞われる体質に戻ってしまったようですね。

四季

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後編

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 薄々気づいてはいた。
 彼がいずれこうするだろうということは。

 でもそれでも彼を信じたくて。

 だから見ないふりをしてここまで歩いてきた。

 だがそれももう限界なのかもしれない。

「君とは共には歩めない、いや、歩まない。悪いがもう決めたことだ、理解してくれ」
「そんな……本気、なのですか?」
「ああ本気だよ。それ以外に何がある? 冗談でこんなことを言い出すとでも? そこまで馬鹿じゃない」

 こうして彼との関係は終わりを迎えたのだった。


 ◆


 あれから二週間。
 噂でモフォルグが大変なことになったことを知った。

 彼は私と離れたことで呪われを再燃させてしまったようなのだ。

 カルタにプロポーズしようと考えていた朝、馬車の座席から突如転落し、足の小指を骨折。搬送された先の病院にてカルタに会うも彼女から「好きな人ができたから婚約することになった」という衝撃の事実を告げられる。それによって大ショックを受けた彼はその日の晩発熱し、前例がないほどの高熱にうなされることに。その熱は数日間にわたって彼を苦しめ、ようやく回復するもその頃には『モフォルグ王子はカルタに捨てられた』という噂が広く流れた後で。身体の調子の乱れが落ち着いたら今度は精神的に乱されることとなってしまった。彼のもとへは連日その件を探ろうとする新聞記者が集まり、その対応によって彼は疲弊する。

 そして、ある爽やかな日の早朝、彼は自ら死を選んだそうだ。

『この苦しみから逃れるにはこれしかない』

 それが彼の最期の言葉であった。


 ◆


 あの婚約破棄からどのくらい月日が経っただろうか。
 私は今、良き夫と二人の子に恵まれ、穏やかな家庭を築くことができている。

 夫は領主の家の子息。
 元々経済的に余裕のある家の出でありながら、さらに自分でも事業を起こし順調に波に乗せているような有能な人だ。
 また、それでいて家庭も放置はしない。
 少々おっちょこちょいで天然気味なところもあるにはあるが、決して悪い人ではない。

 私はこれからも彼と共に生きてゆく。

 私が持っているこの災難を退ける力は、これから先ずっと、愛する人と愛する家庭のために使おう。

 もう誰にも利用させはしない。
 もう勝手なことをする人のためには使わない。

 他の女にふらふらするような者のためにはこの力は使わないのだ。


◆終わり◆
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