前を向いて生きてゆくことの大切さを今ひしひしと感じているところです。~身勝手に切り捨ててくるような彼には執着しませんよ~

四季

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後編

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「はぁ? 何だよ偉そうだな」
「婚約破棄したいんでしょ?」
「ああそうだ」
「だから、それでいいと言っているの」
「分かったぞ! 負け惜しみだな!? 負け惜しみ、なんだな!?」
「言葉そのままの意味でしかないわ」
「ふん! だがまぁいい。婚約破棄を受け入れるんだな? そう言ったな?」
「ええ」
「じゃ、そういうことで。――バイバイッ!!」

 エーデルヘルホフは数回反復横跳びをし、走り去っていった。

 一体何だったのだろう……。

 謎でしかない。
 婚約破棄したうえ急に走り去るなんて。

 だがまぁこれも人生か。
 これが私の運命なのならそれでも構わない。

 花壇に咲いたカラフルな花が風に柔らかく揺られていた。


 ◆


 エーデルヘルホフの実家に隕石の欠片が落下したのは、あの婚約破棄宣言から数日が経ったある夜のことであった。

 彼と両親、そして妹。
 家族揃って寝ていたところに隕石の欠片が落ちてきたようで――それによって家は吹き飛び、彼らは全員灰になった。

 つまり、エーデルヘルホフはもうこの世にはいなくなってしまったのである。

 それは私にとって意外な展開であった。
 まさか彼がこの世から去ってしまうことになるなんて夢にも思わなかった。

 でも現実は想像していたよりも厳しくて。

 彼はその生命を保つことすら許されなかったようだ。


 ◆


 あれから数年。
 良き夫に恵まれ、裕福で幸せな生活を手に入れることができた。

 私たち夫婦は今とても幸せに暮らしている。
 生きていて良かった、生きてきて良かった――そんなことをとても強く感じているところだ。

 どんなことがあっても前を向いて歩いていれば良いことに出会える。いつか誰かがそう言っていたけれど。半分幻想みたいなものだと思っていた、が、どうやらそれはあながち間違った話でもなかったようだ。


◆終わり◆
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