2 / 2
後編
しおりを挟む「はぁ? 何だよ偉そうだな」
「婚約破棄したいんでしょ?」
「ああそうだ」
「だから、それでいいと言っているの」
「分かったぞ! 負け惜しみだな!? 負け惜しみ、なんだな!?」
「言葉そのままの意味でしかないわ」
「ふん! だがまぁいい。婚約破棄を受け入れるんだな? そう言ったな?」
「ええ」
「じゃ、そういうことで。――バイバイッ!!」
エーデルヘルホフは数回反復横跳びをし、走り去っていった。
一体何だったのだろう……。
謎でしかない。
婚約破棄したうえ急に走り去るなんて。
だがまぁこれも人生か。
これが私の運命なのならそれでも構わない。
花壇に咲いたカラフルな花が風に柔らかく揺られていた。
◆
エーデルヘルホフの実家に隕石の欠片が落下したのは、あの婚約破棄宣言から数日が経ったある夜のことであった。
彼と両親、そして妹。
家族揃って寝ていたところに隕石の欠片が落ちてきたようで――それによって家は吹き飛び、彼らは全員灰になった。
つまり、エーデルヘルホフはもうこの世にはいなくなってしまったのである。
それは私にとって意外な展開であった。
まさか彼がこの世から去ってしまうことになるなんて夢にも思わなかった。
でも現実は想像していたよりも厳しくて。
彼はその生命を保つことすら許されなかったようだ。
◆
あれから数年。
良き夫に恵まれ、裕福で幸せな生活を手に入れることができた。
私たち夫婦は今とても幸せに暮らしている。
生きていて良かった、生きてきて良かった――そんなことをとても強く感じているところだ。
どんなことがあっても前を向いて歩いていれば良いことに出会える。いつか誰かがそう言っていたけれど。半分幻想みたいなものだと思っていた、が、どうやらそれはあながち間違った話でもなかったようだ。
◆終わり◆
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
四季
恋愛
本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。
お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。
四季
恋愛
お前は要らない、ですか。
そうですか、分かりました。
では私は去りますね。
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
四季
恋愛
もう好きと思えない? ならおしまいにしましょう。あ、一応言っておきますけど。後からやり直したいとか言っても……無駄ですからね?
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~
銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。
自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。
そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。
テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。
その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!?
はたして、物語の結末は――?
婚約破棄、別れた二人の結末
四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。
その婚約者であったアソンダソン。
婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる