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前編
しおりを挟む幼い頃から歌うことが好きだった。
歌えば皆が褒めてくれて。
それも嬉しくて。
思えば私はいつも歌っていた。
人前でも、一人でも、歌と共に生きていた。
「歌なんかを趣味にしているなんてサァ、良家の令嬢としてどうかしてるよネェ。婚約者として恥ずかし過ぎて胃が溶けそうだヨォ。ってことで、君との婚約は破棄するかラァ。いいよね? 歌なんかを趣味にしてるそっちが悪いんだもんネェ」
でも、私の趣味は、婚約者プペペには理解されなかった。
彼は「歌なんて良い身分の女性がすることじゃない」という思想の持ち主で、最初から私が歌うことを得意としていることを良く思っていないようだった。が、これまではそこまで強く言われはしなかった。だから少々油断してしまっていたのだけれど。
どうやら、よっぽど嫌だったようだ。
「そんなに嫌ですか?」
「あぁ嫌だネェ」
「なぜそこまで嫌がるのですか? 世の中では歌うことは悪いこととはされていませんよね?」
「嫌なものは嫌なんだヨォ!! 黙れクソ女!! くだらねぇことばっかしておいて偉そうに言い返すんじゃないヨォ!!」
……それが本性か。
私はプペペと離れることを決めた。
「分かりました。では私はこれで去ります。さようなら」
プペペのためにこれまでの私のすべてを捨てることなどできない。どちらも取れれば理想的だったけれど、どちらかしか取れないのなら私は迷わず歌を取る。プペペとの関係より歌うことの方が大事だ。
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