野蛮娘と呼ばれた私は、婚約者のもとから去り、森で幸せを掴みました

４話

　皆は呪いでもかかっているのではないかと考えているのだろう。けれども、あの場所での暮らしを経験した私には、それが呪いでないことが分かる。ただし、あそこに蔓延っているのは、呪いよりも恐ろしいもの。

　そう、リリエンナの虐めである。
　前の婚約者も恐らくそれにやられてしまったのだろう。

「鍋出してきたよ」
「ありがとう！　じゃあ果物を洗ってきて？」
「はいはーい」


　◆


　十五年後、ちょっとした買い出しのため人の世に顔を出した時、カルペン家に関する噂を聞いた。

　五十代くらいの女性二人が立ったまま話していたことである。

　あの後、不幸にもカルペンの父親の事業が失敗し、カルペンの家は経済的に傾いてしまったそうだ。

　カルペンの父親は給料を得るために仕事を探していたようだが、なかなか決まらず、そのうちにストレスで理性が崩れてしまった。段々怒りっぽくなり、家にいる間は酒をよく口にするようになったとか。以前から多少の酒は嗜んでいるようだったが、みるみるうちに量が増えて。酔っ払って道をふらふやしていることも増えたそうだ。

　また、夫がそんな状態になってしまったことによって、妻であるカルペンの母親も変わっていってしまったらしい。

　初めのうちは内職で生活費を稼いだりはしていたようだが、酔っ払いの夫から暴力を振られるようになったこともあって、精神を病んでしまう。また、その影響でしまいには体調も崩してしまった。床に伏せたまま一年を過ごし、その後、静かに亡くなったそうだ。

　酒に狂わされた父親は、よく分からぬままリリエンナを売り飛ばし、まとまったお金を得る。が、それを有意義に使うことはしなくて。結局すべて酒を買うために使ってしまって、またしても貧しくなってしまったそうだ。

　ちなみに、カルペンはというと、家族に嫌気がさして何も言わず家を出ていったらしい。


◆終わり◆