上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む
 ◆


「貴女、とても美しいですね。しかも、ただ美しいだけじゃない。凛とした魅力があって、女性として素晴らしい。これからの時代、国の中枢にも貴女みたいな女性が必要だと思います。どうか、私と結婚してほしいのです。……どうでしょうか?」

 王子に見初められたのはアネネではなく私だった。

「んもぉ~ご冗談を~、どうしてそんな地味姉にばっかり絡まれるんですのぉ? わたくしの方がぜぇ~ったいに満足していただけますのにぃ~」
「そういうところが嫌なのです、近づかないでください」
「へ……?」
「乳を突き出し媚を売るような女性は王家の繁栄のためにはなりません。それに、これは個人的な話ですが、私は貴女のようなすり寄ってくる女性が大嫌いなのです」

 むきになって王子の気を引こうとしたアネネは王子に嫌悪感しかないような目で見られたうえ、会場から去ることを強制された。

「見て、あれ、お下品だこと!」
「みっともないわね」
「さすがにあれは……自信家過ぎですわね」

 皆、プライドが高いうえ必死過ぎて憐れなアネネを見て、くすくすと笑っていた。


 ◆


 その後、私は王子と結婚し、城にて生きてゆくこととなった。

 まさか私がこんなことになるとは思わなかったけれど。
 でも悪い流れではない。
 愛されて生きられるなら場所なんてどこでも良い。

 ちなみに、アネネはというと、あの日自宅へ帰るや否や正気を失ったそうだ。奇声を発しながら夜な夜な暴れまわり、家具から何からを壊し尽くして、両親を大変困らせたらしい。また、それからも自室にこもって出てこないかと思えば暴れまわるということを繰り返し、酷い状態だったそうだ。

 もうしばらく会っていないけれど、今や彼女はよく分からない言葉しか発することができないらしい。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...