婚約破棄されたので趣味の延長で小さなお店を始めてみました。~そこで意外な出会いがあって!?~

四季

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後編

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 ◆


 あれから半年、私は最近編み物で作った品を売る仕事を始めている。

「これくださ~い」
「はい! お買い上げありがとうございます!」
「すみませんこれってー」
「はい、対応しますので少しだけお待ち下さい!」

 もともと編み物が趣味だったので、それを仕事にしてみた形だ。

 本当は仕事せずとも生きてはゆけるのだけれど。
 何もしないでぼんやりしているというのもおかしな感じがして、それで、こういう仕事を初めてみたのだ。
 あくまで趣味の延長線上にある程度のものだけれど。
 それでも、何もしていないよりかは、毎日に張りも生まれるというものである。

「――すみません、これ」
「あ、はいっ……って、え!? 貴方は!!」

 そんな中で出会ったのが――。

「申し訳ありません、事前連絡もなく来店してしまい」
「え……あ、いや、いいんです、けど……」

 ――白銀の髪を持つ美男子系王子フィティプであった。

「こちらの商品が気に入りました、とても美しいです。なので購入させていただきたいのですが、可能でしょうか?」
「……あ、はい、可能です」
「ありがとう。ではこちらをお願いします」
「少々お待ちください! すぐに対応いたします!」

 王子との出会い、なんて、欠片ほども想像していなくて。でもその時は実際にやって来た。そしてそれは、私の人生を大きく変えてゆくこととなる。

「ありがとうございました、とても素敵な作品でした」
「ご来店ありがとうございました」
「またタイミングがあればこっそり来ますね。次来る時にはなるべく前もって連絡するようにします」


 ◆


 何がどうなったのか、私はフィティプ王子の妻の座に収まった。

 彼がアプローチしてくれて。
 それで何となく流れで。
 気づけば私は王時の妻となっていたのだった。

 人生、不思議なこともあるものだ。

 けれども私はこの道を選んだことを悔やんではいない。否、むしろ良かったと思っている。彼の妻となれたおかげで今は好きなように編み物に取り組めている、将来の不安もなくなった。そういう意味では、彼には大変世話になっているし助けられてもいるのだ。

 ちなみにアンドレーはというと、あの後大恋愛をするも両家から反対を受け別れざるを得なくなってしまいそれによって心が壊れてしまったらしく、今は実家で親と一緒に暮らしているが一日中よく分からない踊りを踊っているような状態だそうだ。

 かつてのアンドレーはもうこの世にはいない。


◆終わり◆
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