貴方の浮気、バレてますよ

四季

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前編

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 帽子屋の一人娘として生まれたあたし、メアリー・ノーナは、親が営む帽子屋を時々手伝いつつ楽しく暮らしていた。

 だが、十八になった日に、近所の人から息子と婚約することを頼まれて。

 あたしは最初何を言われているのかよく分からなかった。が、父親が「そろそろ良い年頃だろう」と言って、その息子とあたしを結婚させることにした。

 そうして成立した婚約。正直、あたしは乗り気ではなかったけれど。でもまぁそういうこともあるよね、と、自分を納得させていた。

 ただ、その婚約は今、破棄の危機に陥っている。

 先日彼の浮気が発覚したのである。

 婚約して顔を合わせるようになった頃、彼はあたしに親切にしてくれた。喋ってくれたり。贈り物をくれたり。案外嫌な感じではなかった。けれどもいつしか怪しい行動が増えて。違和感を感じていた最中、彼が別の女性と仲良くなっていることが発覚した。

 浮気の相手の女性はとても美人。

 高すぎない程度に高い鼻、薄いが華やかな色みの唇、そしてアーモンド型のはっきりした目。また、目を彩る睫毛は長く、まるで花弁のよう。それに加えて、引き締まりつつも凹凸のある魅惑的な身体をしている。

 あたしより彼女の方が魅力的、というのも、分からないではないけれど。本能的に魅惑的な女性に惹かれるのも理解はできるけれど。でも、一応婚約しているのだから、多少は配慮してほしい。人の世には立場と関係というものがあるのだから。

 浮気のことを両親に相談したのは一昨日。
 そして今日、あたしは婚約破棄を告げる予定だ。

 不安はある。逆にいちゃもんをつけられたら、などという、形のない不安。逆に責められたらどうしようと考えてしまう部分もあるけれど、でも、あちらに非があることは確か。

 証拠もいくつか手に入れている。

 きっと上手くいく、今はそう信じたい。
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