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3話
しおりを挟む「誰も必要としてないんですそんなの……」
「よければいただきたいんですけど」
「……え?」
「ケーキ好きなんです、食べていいですか」
「……はい、どうぞ、もう好きになさってください」
「ありがとう! じゃあいただきますね!」
「これもあげます……マフラーと手袋、もう要らないので……」
「そ、そうですか。分かりました。使うかは分からないですが、では一応受け取っておきますね。ありがとうございます」
◆
あれから一週間。
「この前のケーキ、美味しかったです!」
あの時の青年がやって来てお礼を言ってくれた。
「なぜここが……?」
「村民名簿を見てみたんです」
「ええっ」
「顔の記録もあるのですぐ分かりましたよ」
「ああ、そうでしたか……」
しかもお礼の品まで貰ってしまった。
紅茶だそうだ。
「アップルケーキ、美味しかったですよ凄く」
「……なら良かったです」
「よければ次もいただきなと思っていて。でもただでとは言いません、次からは購入させてください」
「そ、そんなの……お金なんて」
「当たり前のことですよ、良い品にお金を払うのは」
「食べに来てください! ……いつでも。その……どうせもう、私、何もないですから」
◆
あれから数年。
私は今もあの時であった青年と仲良くやっている。
はじめは苦労して作っていたアップルケーキも、もう随分作り、すっかり慣れて上手くなった。
思えば、いつも隣には彼がいて。
彼と共に私のお菓子作りの腕も伸びた気がする。
ちなみにレベルファイはもうこの世にはいない。
女関係で揉め事を繰り返し、ある時ついにその報いを受ける時が来て――関係者であった一人の女の恋人に角材で殴られたうえ刃物で刺され、死亡したそうだ。
◆終わり◆
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