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2話

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 もう何も取り戻せないのかもしれない。
 手遅れなのかもしれない。
 何をしてもきっともう無駄なのだろう。

 彼は私を愛さない。

 友として、でさえも。

「二度と俺の前に現れるな」

 拳でガラス細工を叩き壊すような――そんな終わりだった。


 ◆


 帰り道。
 もう堪えられなくて。

 抱えていたプレゼントを地面に捨てて、伏せて、泣いた。

 私だけが浮かれていた。
 愛されてもいないのに。
 好きだなんだと幼い子のようなことを言って。

 ……馬鹿だった。

 愛されるわけがなかった。
 受け入れてもらえるはずがなかった。

 私には、彼の行いを見て見ぬふりしておく道しかなかったのに……。

 見て見ぬふり、それをやめたら、そこで関係が終わってしまうのは当たり前のことだったのに……。

「……あの」

 その時、誰かが声をかけてきた。

 彼は私の顔を覗き込んでいた。

「ケーキ、これ、落として勿体ないですよ」
「も、もういいんです……もう……ううっ、ずっ、もういいんです要らないんです何も……そんなものも要らないんです、受け取ってすらもらえないケーキなんて……うううっ……」

 感情のままに言葉を紡いでしまう。
 冷静さなんてどうやっても戻ってこない。

 そんな私にその青年は言う。

「ええと、じゃあ、いただいても?」

 ――そんなことを。
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